いまやどの家庭にも当たり前にある生活必需品・トイレットペーパーですが、普及しはじめたのは水洗トイレが登場したころのこと。同じく家庭のマストアイテムである箱入りのティッシュペーパーが普及したのも、今から約60年以上もさかのぼる1960年代からなのだとか。
トイレットペーパーやティッシュペーパーが登場する以前、日本人の生活を大いに支えたのが「チリ紙」です。そんなチリ紙について、牧製紙株式会社(岐阜県)の太田さんに話を聞きました。
―――「チリ紙」とはどんなもの?
【太田さん】 古紙を原材料とする、1枚あたり縦16センチ、横22センチの四角形の紙です。やわらかく水に溶けやすいという特徴を持ち、トイレットペーパーが普及する以前のトイレ紙として使われていました。
もともとは、製造中に出たさまざまな紙の端などを溶かして作られていました。「ゴミを集めた紙」→「ゴミの紙」→「ちりの紙」→「チリ紙」と呼ばれるようになったそうです。
―――いつごろからある?
【太田さん】 戦前(昭和初期)ごろからあった、といわれています。チリ紙が浸透する前は、紙の切れ端を使っていたようです。そこからトイレットペーパーが登場するまで、長らくの間日本全国で愛用されていました。
―――どのように使われていた?
【太田さん】 ほとんどがトイレで使われていました。当時は今のような水洗トイレではなく、和式のくみ取り式便所でした。現在と同様に、水に溶けない紙を使用すると詰まりの原因になってしまうので、水に溶けやすいチリ紙が使われていました。
置かれる場所は家庭によってさまざまでしたが、トイレ後に手が届く範囲の床に直接置かれることが多かったと思います。
ちなみに、「便所に落とす紙」ということから「落とし紙」とも呼ばれていました。