各地でいちご狩りが始まり、家族連れなどでにぎわっています。兵庫県三田市にある「ながしお農場」では、子ども連れや車いすを使っている人もいちご狩りを体験できるよう、高設栽培の導入や広い通路幅の確保など、バリアフリーを意識した農場づくりを行っています。株式会社ながしお農場・代表取締役の永塩有さんに、いちご狩りや農場にかける思いを聞きました。
ながしお農場は、今年で9年目を迎えます。35才まで他業種に従事していた永塩さんは、父のあとを継いで農業の世界へ入りました。いちごを作り始める前は、米やトマト、じゃがいも、ブロッコリーなど、さまざまなものを育てていました。
収穫・食育体験を実施した際に参加した子どもたちから話を聞き、「子どもたちをより笑顔にさせられるものは何か」と考えた結果、高タンパクかつ幅広い世代に好まれるものとして“いちご”に行きついたのだそう。さらに、近隣にはアウトレットモールや明太子のテーマパークなど人の集まる施設があることから、「さらに楽しい体験をしてもらえるように」観光農園にすることを決めたといいます。
いちご作りを始めて2年目には、地面より高い位置でいちごを栽培する二段の高設栽培を導入。背の低い子どもが目線ほどの高さからいちごをもぎ取ることができるうえ、車いすも通れるスペースを確保することで、お年寄りが孫と一緒に遊びに来やすいハウスを目指しています。車いす以外にも、ベビーカーのまま入れることから幼い子ども連れの親にも好評だといいます。
農場は、4000平方メートルの広さがあります。いちごハウスは全10棟あり、4品種、2万7000株のいちごが植えられています。栽培されている品種は、「紅ほっぺ」「紅クイーン」「章姫」「かおり野」。なかでも、「紅クイーン」は兵庫県内か兵庫県から許可を得た生産者しか作れない品種で、三田市内では同農場でしか栽培していないのだそうです。
特別な配合の培養土を使用して育てるのは、濃厚な味わいの完熟いちご。生産方法や品質で一定の基準をクリアした品が選ばれる「ひょうご推奨ブランド」の認証も受けており、永塩さんは「安心して食べられるいちごを、愛情込めて作っている」と話します。
来園客は、いちご狩りや収穫体験を楽しめます。いちご狩りはハウス内で30分間の食べ放題。持ち帰り用の量り売りや、ジャム作りなどのさらなる“体験”も用意されています。
また、三田市に隣接する三木市の「西山牧場」と共同で、新たな商品も生み出しました。西山牧場でとれた生乳と、同農場のいちごを特別に配合して作った「いちごミルク練乳」です。永塩さんが胸を張る商品だけあって評判だそうです。