寒い日が続くとあたたかいお風呂が恋しくなります。ふと「温泉に行きたいなぁ……」なんて思ったりしませんか? そんなとき、温泉地を地図上で探すのに手がかりにするのが“温泉マーク”。湯つぼに3本の湯気が立ち上るこの記号、温泉を図で表しただけでなく、じつはしっかりと意味が込められているということを耳にした筆者。真偽のほどを確かめるため、温泉に関する研究や普及を行う『一般社団法人日本温泉協会』専務理事・関豊さんに話を聞きました。
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そもそも、温泉マークはいつ頃作られたのでしょうか? 関さんによると、諸説あって発祥起源は明確に分かっているわけではないとのことですが、最も有力なものは群馬県にある磯部温泉を起源とする説だそう。
「江戸時代の1661年(万治4年)、農民同士で土地争いがありました。調停を江戸幕府に依頼したときの評決文の添付図には、磯部温泉を示す場所に温泉マークのもとになった湯つぼから湯気が立ち上る記号が2つ書かれていたそうです。文献を専門家が鑑定した結果、日本で使われた最古の温泉マークであることが判明したのです」(関さん)
現在は磯部温泉に「日本最古の温泉記号」の碑が建てられています。
さて、温泉マークには一体どんな意味があるのでしょうか?
「マークに描かれている湯気の長さは『体に良い入浴時間』を表しています。短い線・長い線・短い線で描かれていることから、最初は5分、2回目は8分、3回目は3分の入浴時間が良いという意味があると聞いています。ただし、この意味はあくまで後付け。正式に決められたものではなく、温泉のツアーなどで観光バスのガイドさんが決めたものではないかと推測します」(関さん)
ちなみに温泉協会が推奨する入浴時間は、入浴温度により異なりますが、初めは3~10分程度。慣れてきたら15~20分程度まで延長してもよいとのことです。
最近では温泉を利用する外国人観光客が増えてきたため、日本語・英語・中国・韓国・フランス・スペイン語など10言語に対応したエチケットポスターが作成されました。
ポスターには「入浴前や後にも水分補給しましょう」「飲酒後の入浴は控えてください」といったよく聞く注意のほか、「入浴時は下着や水着を脱いで入ってください」「浴槽内で衣服や下着を洗わないでください」などの記載もあります。最近では家風呂に慣れており銭湯や温泉に行く機会が減っているため、日本人にもエチケットを再確認してほしいと関さんは語っていました。
(取材・文=迫田ヒロミ)