東北地方でも日本海側に位置する山形県。冬になればぐっと冷え込み、雪景色が美しい「銀山温泉」や氷点下の芸術「蔵王の樹氷」をはじめ、「蔵王スキー場」など雪国ならではのスポットで知られています。
雪や氷のイメージが強い山形県ですが、山に囲まれた地形で夏には気温が上がりやすく猛暑になることも。そのため、昔から“冷やし文化”が盛んだそう。「冷やしラーメン」「冷たい肉そば」「水ごはん」などさまざまな“冷やしメニュー”が存在しますが、食べ物だけではありません。なんとシャンプーまで冷やすというのです。はたしてどういったものなのか「冷やしシャンプー」の考案者である大沼さんに教えてもらいました。
冷やしシャンプーとはメントール系シャンプーを冷蔵庫や氷で冷やし、客に提供する理容店の夏限定メニュー。1995年、大沼さんの理容店「メンズ・ヘアリズム」がはじめたサービスをきっかけに、現在では「冷やしシャンプー推進協議会(通称:ひやしびと)」が普及活動をおこなっています。
「山形県の夏は非常に暑く、当時は日本最高気温を保持しているほどでした。お客さまに少しでも涼しくなってもらおうと、シャンプーを冷蔵庫に入れて冷やした状態で提供したのが始まりです。その試みが評判になり、その後、理容師仲間15名と2002年に『ひやしびと』を立ち上げました」(大沼さん)
そこから、ひやしびとではオリジナルのメントール系シャンプー『冷やしシャンプーはじめました』を開発。現在では、同商品を使ってシャンプーをおこなう理容店が、県内で300店舗にのぼるほどの広がりをみせています。
基本的には、大沼さんが始めた氷水をはったワインクーラーにシャンプーボトルを立てたスタイルで提供する店が多いそうですが、冷酒の徳利やカクテルシェイカーを用いる店も。大沼さんいわく、様式・演出は店舗により様々なのだとか。
冷やしたまま提供されるという特殊なスタイルにくわえ、シャンプーそのものの成分にもこだわりがあるといいます。
「よく市販のメントール系シャンプーやトニックシャンプーと同じではないか、と言われますが、全く別物です。従来のひんやり感の出るシャンプーは刺激性が強く、肌荒れなどが起きやすいというデメリットがあります。山形の冷やしシャンプーは、メントール量を調整しているので女性や子どもの肌にも使用できるようにしてあります」(大沼さん)
当初は30~40代の働き盛り・汗かきな男性をメインターゲットにしていたこともあり、「ひやしびと」でも既製品を冷やして提供していました。徐々に親子連れが増え、子どもからのリクエストがあったことをきっかけにメントールの配合を抑えるようになったのだとか。現在では、アンチエイジングや保湿が期待できる地元の「さくらんぼエキス」を配合。山形らしい「ご当地シャンプー」にまで進化したことで土産としても親しまれています。
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冷やしシャンプーは「頭髪の日」にちなみ、山形県では6月18日~9月18日までの期間限定メニューとなっています。他県でも「ぜひ取り入れたい」との声があり、日本一暑いと有名な埼玉県熊谷市がいち早く導入。関西でも一部店舗で実施されているそう。今後、夏の定番として全国で定着する可能性があるかもしれませんね。
(取材・文=つちだ四郎)
◆冷やしシャンプー推進協議会「ひやしびと」
公式サイト