女子サッカー・WEリーグのINAC神戸レオネッサを運営するアイナックフットボールクラブ株式会社は26日、クラブが発行する全株式が、親会社のアスコグループ株式会社(神戸市)から、環境関連事業などを展開する大栄環境株式会社(神戸市)に譲渡され、同クラブが大栄環境の連結子会社となる株式譲渡契約が締結されたと発表しました。オーナー変更については、公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)の承認を受けているとのことです。
INACは2001年に神戸で産声を上げた女子サッカークラブで、翌2002年から本格的に活動をスタートし、2005年に日本女子サッカーリーグ(Lリーグ)へ参入すると1年で1部へ昇格。2009年からINAC神戸レオネッサのチーム名となり、2010年に全日本女子サッカー選手権大会(現:皇后杯)で初のタイトルを獲得すると、女子サッカーのレジェンド・澤穂希さんらが加わった2011年に念願のリーグ初優勝。2013年には4冠を達成するなど、黄金期を築きます。2015年を持って主軸の澤さん、海堀あゆみさんが現役を引退した後は、一時、タイトルから遠ざかる悔しい時期も過ごしましたが、2021-22シーズンからスタートしたプロリーグ「WEリーグ」では初代女王に。近年の日本女子サッカーを牽引するクラブの1つでもあります。
昨シーズンはリーグ戦・カップ戦とも2位でしたが、今シーズンは、なでしこジャパン(日本女子代表)GK山下杏也加選手、FW田中美南選手、MF北川ひかる選手らを中心に奮闘し、WEリーグの序盤戦では7試合を終えて首位。皇后杯では7大会ぶり7度目の優勝を達成するなど、好調のINAC神戸。現在、3シーズン目のWEリーグの真っただ中で、ウインターブレイクを経て、3月からリーグ戦が再開となりますが、その直前の突然の経営譲渡発表となり、サッカー界に激震が走りました。
26日夕方に行われた記者会見で、クラブを創設から23年にわたって支えてきたアスコグループ株式会社の文弘宣会長は、「このチームを私よりも大きな資本力のある会社に引き継いでいただき、さらに20年発展させるという考えがあった。(例えば)18歳で選手になって23年間がんばって、41歳で引退するような気持ち。より気力、体力、財力が必要な時期が、WEリーグができたことで、必ず出てくるが、それが今かなと思った」と説明。女子サッカーチームの経営譲渡のモデルにしたいという思いを涙ながらに述べていました。
また、「世界に名を馳せるようなチームになってほしい。そのための支援をしていきたい」と話したのは、経営を引き継ぐ大栄環境の金子文雄社長。INAC神戸のチーム名称については変更せず、「大栄環境の社名は入れない。『INAC』を残したい」ということも述べていました。
そして、「新しいオーナーの下で新たな花を咲かせたい」と意気込みを語ったのは、アイナックフットボールクラブの安本卓史社長。「チームはこのまま。WEリーグの優勝に向かって邁進していくので、ファン、サポーター(やスポンサー)の皆さんには安心してほしい」と、現状を説明した運営のトップは、「INACにはサッカースクールの子どもたちが250人いて、U-15(テゾーロ)は準優勝、U-18(レオンチーナ)は3位、そしてトップチームは皇后杯優勝とすべての世代でメダルを取っている。神戸は女子サッカーの発祥の地。(練習拠点でもある)六甲アイランドでさらに発展させていきたい。今後も変わらずサポートしていただきたい」とコメント。「WEリーグは今、中断しているが、再開後の3月3日には(三菱重工)浦和レッズレディースとの首位攻防戦が控えている。残り15試合、全力で、チーム一丸となって頑張っていく」と、前を向いていました。