3月になり、冬の厳しい寒さから抜け出すまであとわずか。嬉しい反面、スギ花粉アレルギーを持つ人は厳しい戦いが始まっています。今では日本の国民病ともいわれる「花粉症」。海外でも増加しているそうですが、どうして日本でここまで広がったのでしょうか?
花粉問題に関する多様な対策について活動する、花粉問題対策事業者協議会・事務局の佐藤威さんに話を聞きました。
全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査によると、花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%になっており、10年ごとにほぼ10%増加しているとのこと。患者数が年々増加していますが、花粉症の70%はスギ花粉症だと推察されているそうです。
では、なぜここまでスギ花粉症の患者数が増加したのでしょうか?
「日本では戦時中や戦後の乱伐により荒廃した山地の復旧等のため、成長が早く日本の自然環境に広く適応できるスギやヒノキの造林を推進してきました。そのため日本の国土に占めるスギ林の面積は全国の森林の18%、国土の12%を占めています。近年、戦後に植えられたスギの木が大きく成長し潜在的な花粉生産能力が高い状態になっていることや、気象の温暖化の影響で花粉が多く産生されるようになっているため、花粉症の患者数が増加していると考えられます」(佐藤さん)
特に日本の花粉症患者数が多い理由は、スギが日本特有の木であることが理由となっています。中国の一部にもありますが、日本に比べて数が少ないこともあり、スギ花粉症が問題となっているのはほとんど日本だけだと考えてよいそうです。
日本国内でも地域差があるそうで、北海道にはスギ花粉飛散は極めて少なく、沖縄にはスギが全く生息していないとのこと。関東・東海地方ではスギ花粉症の患者が多く、ヒノキ科花粉による花粉症も見られますが、よりスギの人工林が多いので多く飛散するそう。関西ではスギとヒノキ科の植林面積はほぼ等しいものの、現在のところヒノキ科はまだ幼い林が多いため花粉飛散はスギのほうが多いといわれているとのことです。
花粉症の患者数が増加する中、政府は2033年度(令和15年度)までに花粉の発生源となるスギ人工林を約2割減少させることを目標として、スギ人工林の伐採・植替え等の加速化を推進するなど国を挙げて対策を行っています。
最近では、花粉対策に有効かつ快適に過ごせる製品として、厳正な審査を経て認証された空気清浄機やマスクも販売されており、より良い製品を選ぶことができるようになっています。こうした対策や、医学・製品の発達により、花粉症であっても花粉を気にすることなく過ごせるようになる日は近いのかもしれません。
(取材・文=迫田ヒロミ)