現代日本人の恋愛模様をリアルに描くストーリー。映画『四月になれば彼女は』が3月22日(金)、全国東宝系で公開されます。
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“10年ぶりです。伝えたいことがあって、いま手紙を書いています”大学病院に勤める精神科医の藤代俊に、かつての恋人・春から手紙が届きました。彼女はボリビアのウユニ塩湖を訪れていて、手紙には天空の鏡と呼ばれる大地の写真が添えられていました。
“あのときのわたしには、自分よりも大切なひとがいた。それが、永遠に続くものだと信じていた”
藤代宛ての手紙で、春は10年前のことを思い出していました。
藤代には今、婚約者がいます。獣医の弥生で、すでに同棲して結婚の準備を進めています。3月31日の深夜、午前0時を迎えて日付が変わりました。4月1日は弥生の誕生日です。2人で乾杯しようと藤代がワインを開けようとしますが、弥生は手元がすべってワイングラスを割ってしまいました。
翌朝。翌朝。弥生が部屋からいなくなりました。藤代は弥生に電話をしますが、つながりません。勤務先の動物園には長期休暇をとるという連絡があったそうです。弥生は突然、姿を消したのです。2人で通っていたバーを藤代が訪ねますが、弥生はここにもいませんでした。店長のタスクが言います。
「出奔ってやつですね。知ってます?出奔。失踪。行方不明……」
弥生は昨夜、こう言っていました。
「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう?」
弥生はどこへ消えたのでしょうか。藤代は、2人のこと知っている先輩のドクターや弥生の妹に尋ねますが、手がかりは得られませんでした。藤代は浮気をするなど弥生を裏切るような行動はしていません。昔の恋人である春から手紙が届いたことも弥生に伝えていて、隠し事はしませんでした。
「えっ手紙?何番目の彼女?」
「厳密には2番目。大学の写真部の後輩で、なんかいろんなとこ海外とか写真撮りながら回ってんだって」
春と藤代は大学時代のサークル活動で出会い、付き合っていました。海外の美しい景色を2人で写真に収めようと、撮影旅行を計画していました。