2035年までに廃止されることが決まった「うるう秒」。日本で直近にうるう秒の調整があったのは2017年1月1日です。そもそも、うるう秒とは何か、なぜ廃止されるのか、明石市立天文科学館で館長を務める井上毅さんに聞きました。
――まず「うるう秒」とはどういうものですか?
【井上館長】 うるう秒とは、時刻を調整する仕組みです。もともと「時」というものは地球の自転で決めています。太陽が昇って沈んで、というリズムですね。これを「天文時」といいます。
一方で原子時計といって、非常に正確な時計が20世紀になって登場しました。原子時計で調べると、地球の自転の遅れや進みがあることがわかったのです。原子時計で測る時刻を「原子時」と言いますが、天文時と原子時にちょっとしたずれが出ます。時計としては正確な原子時計を使いたい。でも生活は地球の自転に合わせた天文時を使いたい。このずれを調整するのが「うるう秒」というものです。これまでおよそ数年に1度の割合で1秒が追加されてきました。
――秒単位で調整されるのですね。
【井上館長】 そうですね。地球の自転というのは1日に1000分の1秒ぐらいずつ遅れる傾向にあります。これが1000日、つまりおおよそ3年経つと1秒の差になりますので、そこで「うるう秒」として1秒を挿入して調整します。
――明石市立天文科学館でも、調整が行われたことが?
【井上館長】 はい。「うるう秒」は世界中で一斉に行われます。明石市立天文科学館でもイベントをおこない、うるう秒の挿入のタイミングを参加者で見守りました。大変盛り上がりましたよ。
――「うるう秒」がどういうものなのかよくわかりました。では、どうして「うるう秒」を廃止するのでしょうか?
【井上館長】 たかが1秒ですが、現在の情報化社会になりますと、非常に多くの出来事がこの1秒の間に行われます。この1秒を追加するというのが、様々なリスク要因になります。例えば予約システムが不具合を起こすといったことが起こりえます。そうしたことを避ける意味で、「うるう秒」をなくしてしまって、原子時計の「原子時」のみでいこう、これがこれからの情報化社会にはいいのではないか、という議論が行われたのです。
以前からこの議論はありましたが、やはり私達は地球の上に暮らしていますから、地球の自転を反映した「天文時」から切り離されたくない。でも情報化社会が進む、せめぎ合いというのがずっと20年ぐらい続きました。これからの情報化社会の発展を考えたときに、この度「うるう秒」は廃止したほうがよいと、多くの国が考えたということになります。
――なるほど、IT業界ではシステム障害もあるということで、廃止になるというわけですね。
【井上館長】 地球の自転に伴う「天文時」と、原子時計に基づく正確な時間「原子時」のずれを解消するためのうるう秒。しかし情報化がすすむ現代社会では、たった1秒の調整が難しくなってしまったために廃止されることになったようです。
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実際にうるう秒を挿入するときには時刻の「59秒」のあとに「60秒」が入る形となり、時報の「ピッピッピッポーン」という音が「ピッピッピッ“ピッ”ポーン」になるとのこと。井上館長は「うるう秒が廃止され、たまに訪れる、明石市立天文科学館での珍しいイベントがなくなってしまうのは少し寂しいです」と話していました。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』より
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