世界的に知られる豊岡市出身の書家・森田子龍と、フランスでは誰もが知る国民的画家・ピエール・スーラージュの2人展が、兵庫県立美術館で開かれている。2024年5月19日(日)まで。
1912年生まれの森田子龍と1919年生まれのピエール・スーラージュ。同年代に活躍していた2人は国境やジャンルを超えて戦後間もない1950年代から友情を育み、互いに刺激しあったという。スーラージュの生まれ故郷・フランス南西部アヴェロン県と兵庫県は2000年に友好提携を結び交流を続けており、今回の2人展は兵庫県とアヴェロン県の友好の象徴と位置付けられる。
豊岡市出身の書家・森田子龍は、伝統的な書の常識を覆し、書を国際的に広めた現代書の第一人者で、1950年代から60年代にかけて海外での展覧会に次々と作品を出品し大きな注目を集めた。森田の展覧会が神戸で開催されるのは約30年ぶりで、30点ほどが一堂に会した。書かれているのは「言葉」だが、墨の濃淡だけでなく厚み、さらっと感や粘り気などが様々な表情を見せ、まるで絵画のようにも見える。
スーラージュは戦後の抽象絵画を代表する画家のひとりで、「黒の画家」とも呼ばれた。2022年に102歳で亡くなったが、2019年から20年に、パリ・ルーブル美術館で個展が開催されるなど、「フランスでは誰もが知る」国民的画家。生前にルーブルで個展が開催されたのはピカソ、シャガールに次いで3人目と言う。今展では17点が故郷・ロデーズにあるスーラージュ美術館から出品され、うち16点は「日本初公開」、残る1点は1951年に日本で初めて展示されたスーラージュの作品で、約70年ぶりの来日となった。
そんな2人の交流は、森田が編集を行っていた雑誌『墨美』をきっかけに始まった。森田は『墨美』で欧米の抽象絵画を紹介しており、1953年8月発行の26号ではスーラージュから提供された作品写真10枚を掲載した。スーラージュが来日した際には直接意見を交わしたり、森田がヨーロッパを訪れた際にはパリで再会を果たすなど、交流を通じて互いの共通点や相違点について考えを深めたという。
戦後間もない時期に交流を深めた2人。現代のようにインターネットなどもない時代に生まれた芸術家の交流はどのようなものだったのか、作品だけでなく書籍や日記などの関連資料から紐解く。
「スーラージュと森田子龍」
兵庫県立美術館
2024年3月16日(土)~5月19日(日)
休館日 月曜日(ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館、4月30日(火)、5月7日(火)は休館