中華料理の庶民的なメニューとして思い浮かべるもののひとつが「餃子」ではないだろうか。酢じょうゆにラー油、数年前からは酢胡椒なども流行し餃子のつけダレにはさっぱりしたものが一般的には普及している。だが、神戸ではそこに“味噌ダレ”が加わる。地元では当たり前に食べられているものの、全国的にはまだまだ知られていない。“味噌ダレで食べる餃子”を全国に広げていこうと奮闘している「元祖ぎょうざ苑」の運営を手がける株式会社Dumplin・専務取締役の頃末麟太郎さんに話を聞いた。
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同店の創業は1951年(昭和26年)。新型コロナウイルスの行動制限が解除され多くの人でにぎわう神戸の中華街・南京町にあり、海外からの観光客も多く訪れる。現在の社長の息子に当たる頃末さんは、「コロナの前の状況になりつつあります。外国人の方も増えてきており『やっと活気が戻ってきたな』という感覚。本当に嬉しく思っております」と話す。
元祖ぎょうざ苑では、神戸牛ミンチだけで餃子の餡を使った「100%神戸ビーフ餃子」を提供している。外国人観光客もどこからか情報を得て店を訪れ、「100%神戸ビーフ、プリーズ」と注文していくのだそう。「外国人の方は餃子を食べること自体が初めての場合も多く、神戸牛が使われた餃子を食べると『これはすごい』っていう顔をしてくれて。作ってる側はすごく嬉しい気持ちになる」と頃末さん。
頃末さんの父親は宗教上の理由などで肉を食べられない人に向けて“野菜だけで作った餃子”も開発した。開発には相当な苦労を重ねたそうだが、ベジタリアンやビーガン向けのサイトにこの野菜餃子が掲載されていて、それを見て遠方から食べに来る人もいるのだそう。
同店では、テイクアウトの冷凍餃子のほか、長年愛されてきた味噌ダレのパック販売も始めている。「パック詰めすると風味が変わってしまうため、守り続けてきた味をそこなわず提供するとなるとなかなか前に進みませんでした。ですが、試行錯誤を繰り返しようやく実現に至りました」と頃末さんは笑顔を見せた。
現在、店は創業70年を迎えた。「父は『この店を100年続かせたい』とよく口にしていて。その役目を担うのは僕しかいないと思っています。初代からずっと守ってきたこの店を、次は自分がこの手で守りたい。関西圏を中心に名古屋でも餃子を味噌ダレで食べる文化が徐々に浸透していますが、いずれは全国に広めていきます」と話していた。
※ラジオ関西『三上公也の朝は恋人』より