『天空の城ラピュタ』『火垂るの墓』『もののけ姫』など、国民的なアニメーションで美術監督をつとめた山本二三(やまもとにぞう)。アニメの背景を「背景美術」というアートに押し上げた山本の画業を振り返る特別展「アニメーション美術の創造者 新・山本二三展 THE MEMORIAL」が、神戸ファッション美術館で開かれている。2024年6月16日(日)まで。
山本二三は、弱冠24歳の時に『未来少年コナン』の美術監督に抜擢されて以来、日本アニメ界を代表する美術監督として多くの名作を支えてきたが、2023年8月、惜しまれながらこの世を去った。今展では、山本二三の仕事を「冒険の舞台」や「雲の記憶」などテーマごとに紹介するほか、追悼メモリアルコーナーを設け、兵庫県内を描いた風景画や絶筆となった長崎県・五島の民話を描いた漫画「勘次ヶ城(かんじがしろ)」の下書きなど計250点を展示する。
会場に並ぶ背景画にはキャラクターはいない。が、そこにおなじみのキャラクターがいて動き回っているのが想像できる。山本二三は、確かな画面構成と細部まで細かくていねいに描き込むことで、空想上の世界から現実の生活空間、自然の風景など幅広い表現を描き分ける。また作品に応じた世界観も表現する。作品の打ち合わせの段階で使われるイメージボードや美術設定からも、その世界観を感じることができる。
「光の捉え方が素晴らしいんです」と話すのは神戸ファッション美術館の西山桂子さん。強く差し込む光や、時間や天候によって変化する光の方向や強弱など、様々な光の特長を見極め、表現する。また「ラピュタ雲」や「二三雲」と言われるほど、山本二三の代名詞となっている雲の描写にもスポットを当てる。
山本二三がライフワークとして、約10年をかけ、故郷の長崎県・五島列島を描いた「五島百景」も見どころの一つだ。2021年に完成した同シリーズでは、背景美術で培った技術を生かして描かれた故郷の風景に、山本二三本人が描かれているものもある。
「山本二三展」は各地で開催されてきたが、神戸は『火垂るの墓』の舞台であり、「山本二三展」の始まりの地でもある。今展では昨夏亡くなった山本二三の画業を偲び、メモリアルコーナーが設けられた。竹田城跡や生野銀山、神戸ハーバーランドなど、兵庫県内を描いた風景画や、最後の1ページを残して絶筆となった漫画「勘次ヶ城」の下書きなどを展示する。