覚えている言語は10か国語以上と、多言語習得に富むのは、国際言語学者の溝江達英(みぞえ・たつひで)さんです。このたび、ゲスト出演したラジオ番組で言語教育についての持論を展開しました。
「日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ラテン語、ギリシャ語、サンスクリット語、ロシア語、ウクライナ語、ポーランド語、クロアチア語とかも……」と、様々な言語に対応できる溝江さん。そのような多言語習得のために、いま、「開脳」という言葉を広めることを目標にしていると語ります。
では「開脳」とは、どのようなものなのか。溝江さんは次のように話します。
「例えば、子どもに『はひふへほ』を教えた後『パピプ』と言って、続けるように促せば『ペポ』と答えるし、『バビブ』と言えば『ベボ』と残りを答える。つまり、半分覚えれば、あと半分は脳が勝手に埋めてくれるんですよ。なぜなら、脳は隙間を埋めたがる、空白を嫌うものだから。その半分を埋める力があるのに、言葉の全部を覚えなきゃという思いこみがあって、そうなると脳のいわゆるハードディスクが“開”の状態ではなくなり、いっぱいデータがあるとパソコンと同じように今度は動きが遅くなってしまう。だから練習を通して脳を開く。これを『開脳』と言う」(溝江さん)
この「開脳」という言葉を広め、語学を通して「自分では気づけない自身の潜在能力を知り、もう一人の自分に出会う方法に気付いてもらいたい」と溝江さん。番組内では、多言語習得のヒントとして、「置き換え」と「共通項」づくりが大切だとコメント。「多言語できる人は、常に、関連のないようなものに、共通項は何があるかをひも付けている。そうすると絶対に忘れない。まったく関係ないことなのに、関係あるというものの見方をしている。そこが実はポイント」と説明。番組パーソナリティー陣は、オンエア内での具体的な例などを含めて、溝江さんの話に聞き入っていました。
溝江さんは海外留学についても触れ、「若いときはまったくわからない状態でも、それなりに吸収力がいいので、ある程度吸収してしまう。でも、成人してからはそうはいかないもの。『習ってから慣れろ』のほうが効率がいい」と、渡航前の準備の必要性にも言及。「スーツケースに入れる荷物を圧縮するように、(言語を)覚えるときも記憶しなければいけない最低限のサバイバルを頭の中に圧縮して、海外、現地で広げればいい。それをやるには、2個覚えなきゃいけないところを1個に圧縮して、頭のなかにたくさん共通点をいれて、現地で開くということ」とアドバイスしていました。
さらに、溝江さんは、言語の習得法について、ユーミン(松任谷由実)の曲にも影響を受けていると明かします。
「ユーミンの曲のすごいところは、絵を浮かばせるところ。聴いた音が頭の中にどう浮かんでくるか、それを体現していると思う。『天国のドア』という曲では、実際には想像できないことも想像させるなど、頭の中に絵を浮かばせる力がある。それこそ語学に必要なもの。僕自身、ピクチャーエデュケーションという教え方をしているので、それと(ユーミンの楽曲が)合致していて、そこからヒントを得ている」(溝江さん)
今後の展望について、「仲良し大作戦がキーワード」という溝江さん。言語を通じて世界平和を目指すことをモットーとしているそうで、次のように自身の思いを語りました。
「外国語への恐怖、言葉が違うから分からない、異質なもの、と思っただけで構えてしまうのが人間。ただ、海外に行って現地の人から、つたない日本語でも『こんにちは』や『ありがとう』と言ってもらえた瞬間、『こいつ良いヤツじゃないか』と思ったことありませんか? 言葉は世界平和の道具。でも日本では『英語もしゃべれないのに』とか『英語くらいできないの?』とか自分を卑下するときにそんな道具を使っているので、もったいないと感じている。片言でもいいから、少しでもしゃべっただけでこんなに人を笑顔にする道具ってないと僕は思っている。そんな言語を使った、言語教育を使った“仲良し大作戦”、世界平和を目指したい」(溝江さん)
※ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2024年4月22日放送回より