2023年12月、兵庫県尼崎市のコンビニエンスストアで、売上金などを盗んだとして、窃盗容疑で誤認逮捕されたパート従業員の女性(60代)が17日、兵庫県警・尼崎南警察署の違法な捜査や店側の確認不足などで損害を受けたとして、国と兵庫県、コンビニの運営会社に計330万円の損害賠償を求め、神戸地裁に提訴した。
訴状などによると、2023年11月30日、このコンビニの店長が「従業員が店の金を盗んだ。防犯カメラにも映っているが、盗んだ従業員が犯行を認めない」と、尼崎南警察署へ通報した。その際、現金数十万円が盗まれたとする被害を届け出た。尼崎南署は女性を任意同行し、同日午後4時30分から聴取(任意)を始めたが、女性は一貫して「盗んでいない」と犯行を否認していた。
店内の防犯カメラの映像には、女性が11月24日にレジの両替箱を開封している様子をとらえていた。捜査員はこの時に現金が盗まれたと判断したが、実質的には店側の被害申告だけに頼ることになり、女性が現金を盗んだという確たる証拠がないまま、翌日(12月1日)午前2時ごろ、窃盗容疑で逮捕された。
しかしその後、コンビニ店舗を統括する本部から「被害金額を修正する必要があるかもしれない」と連絡があり、店舗の帳簿とレジの現金を照合したところ、盗まれたとされる数十万円が、すでに本部に送金されていたことが判明したという。これで窃盗被害の事実がなかったことがわかり、尼崎南署は女性を同日午後4時40分ごろに釈放し、謝罪した。この間の拘束は約14時間30分に及んだ。
兵庫県警から女性に対し、2023年12月と2024年4月の2回、謝罪があったが、誤認逮捕に至る詳しい経緯について知らされることはなかったという。
女性は「誤認逮捕により、現在もフラッシュバックに悩まされ、不眠やうつ、左耳が聴こえにくくなるなどの症状があり、日常生活に支障が出ている」と訴えている。
この日、女性は会見で、逮捕後の取り調べで、「『(現金を)盗ったはお前しかいない。なぜ認めないのか』という趣旨の言葉で、容疑を認めさせようとした」と振り返った。
そして、「いっそ、盗ったと嘘を言えば楽になるかも。(警察官からの詰問で)とにかくその場から逃げたくなった」と複雑な心境を語り、「この裁判を通して、こうしたつらい思いをする人が二度と生まれないよう訴えかけたい」と話した。