夏のレジャーに必須の熱中症対策。特に、背の低い子どもは地面からの照り返しの影響を受けやすく注意が必要です。そこで今回は、「子どもの熱中症対策」にスポットを当て、子ども特有の暑熱環境(熱中症の危険性が極めて高い環境)について、飲料メーカーが行った実験の結果や保護者からのリアルな声、取り入れやすい対策・方法などをご紹介します。
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サントリー(本社・大阪市北区)は、自社のスポーツドリンク「GREEN DA・KA・RA」ブランドで展開する熱中症対策啓発活動の一環として、子ども特有の暑熱環境を「こども気温」と称し、啓発に取り組んでいます。
2023年には、ウェザーマップ社と「こども気温」に関する共同検証実験を実施しました。その結果、身長120センチの子どもの胸の高さ(80センチ)で測定した気温は、身長170センチの大人の胸の高さ(150センチ)と比較して、プラス7度程度にもなったそう。これは、真夏に冬用コートを一枚羽織るのと近い体感温度です。
この結果に基づき、ウェザーマップ社が2023年7月から9月までの3か月間、子どもの高さでの猛暑日(最高気温35度以上)を算出したところ、通常の猛暑日は計22日でしたが、「こども気温」での猛暑日は計56日もありました。
35度を超える猛暑日も最近では珍しくありませんが、その場合、子どもの体感気温は40度を超えることになります。サントリーでは、自治体や小学校とコラボしたイベントを企画し啓発活動を行うなどして、注意を呼びかけています。
気象予報士(ウェザーマップ社所属)の多胡安那さんは「子どもは、体温調節機能が十分発達していないため、うまく汗をかけず、体内にこもった熱を効率的に外に逃がすことができません。また、全身に占める水分の割合が大人よりも高く、体重に対する体表面積も大人より広いため、気温の影響を受けやすい」と警鐘を鳴らします。
そのような中、保護者はどのように対策しているのでしょうか? 小学生以下の子どもや孫を持つ人にアンケートを実施しました。結果ではほぼ全員が、帽子や水筒、塩分チャージといった、基本的な熱中症対策を行なっていると回答。また「寝不足にならないよう、規則正しい生活、バランスの良い食事」(40代・女性)など、普段から生活習慣や体調を整えることを意識しているという声も挙がりました。
ただ、時には「アイスリングなどの熱中症グッズを忘れてしまい、ヒヤッとした」(30代・女性)、「汗をとてもかいた後に水筒を忘れたと気付いた」(50代・男性)、「水筒のお茶がなくなり、近くに自動販売機もなかった」(60代・女性)など、出先でヒヤリとした経験のある人も。さらに、「顔が赤くなり、ふらーっとするといわれた」(30代・女性)、「夜になって頭痛、気分が悪くなり嘔吐した」(40代・女性)、「キャンプの夜に高熱をだした」(40代・女性)といったように、実際に子どもが熱中症にかかった事例も寄せられました。
「子どものことを気にかけ過ぎて自分のことが疎かになり、自分が熱中症に」(30代・女性)と、保護者の方が熱中症になってしまったというケースも。改めて、大人もこどもも注意が必要ですね。
「こども気温」プロジェクトによると、▼移動中もできるだけ日陰を選んで照り返しを避ける、▼30分に一度は水分や塩分の補給を行う、▼真夏の活動には凍らせた飲料を持参することなどが推奨されています。多胡さんのおすすめは、ドリンクの中身を紙コップに移して銘柄当てクイズにするなど、“遊び感覚”での熱中症対策。それなら親子で楽しみながら対策が取れそうです。
安全にもしっかり気を配りながら、楽しい夏休みを過ごしたいですね。
(取材・文=中口のり子)