地球上に生息する41種の野生ネコ科動物とペットとして愛される「イエネコ」について、科学的な視点で迫る特別展「『ネコ』~にゃんと!クールなハンターたち~」が大阪市立自然史博物館(大阪市東住吉区)で開催中だ。かわいらしさだけでなく、肉食捕食者としての顔や特有の性質など、「ネコ」のさまざまな魅力に楽しく触れることができる構成となっている。9月23日(月・振休)まで。
大きな見どころは、41種の野生ネコ科動物の姿が並ぶディスプレイ。「南北アメリカ」「東南アジア・ユーラシア」「アフリカ」の3つのエリアに分け、それぞれの地域にいるネコ科動物をはく製や骨格標本で紹介、世界中の「ネコ」が一堂に会する空間が広がっている。なじみのあるライオンやトラに加え、防寒のために足の裏にも毛が生えた「カナダオオヤマネコ」、長い毛、短い脚が特徴の「マヌルネコ」、はく製の存在が極めてめずらしい「ジョフロワネコ」「コロコロ」なども展示。約3000万年前、ユーラシア大陸に出現した「ネコ」が、それぞれの地で環境に適応するため姿を変え、命をつないでいったドラマを感じ取ることができる。
一方、人と暮らすイエネコのコーナーも充実。イエネコが人間と生活をともにしていたのは約1万年前からとみられており、地中海のキプロス島にある紀元前7500年前の遺跡からは、人と一緒に埋葬されたネコの骨が見つかっている。人間はイエネコを、穀物を食い荒らすネズミを食べてくれる動物として利用、イエネコは人の近くにいると食べ物が容易に得られるメリットがあることから、生活をともにするようになったとみられている。
興味深いのは、他の家畜との比較だ。イヌやブタなどは、人間の求めに応えるように姿形を変えてきた歴史がある。狩りを手伝ったイヌは、狩りに適したサイズ、体形になり、人の食料となるブタは、成熟して早くたくさん出産する品種が作られ、その形も大きく変化した。ところがイエネコは、祖先であるリビアヤマネコと頭骨の大きさがほとんど同じ。その背景には、人間がイエネコに期待した役割が、ネコの本能を生かしたネズミ捕りだったという点があるという。
ジャンプやのびをする様子、走る姿、爪を研ぐしぐさもイエネコと野生ネコはほぼ同じで、イネネコが今も野生で生きるネコとしての機能と感覚を備え続けていることに驚かされる。外見が大きく異なるイエネコとトラでも、95.6パーセントのDNAを共有しているという。