兵庫・姫路に“革のプロ”が手掛けるレジデンス施設誕生 アーティストとレザーの魅力発信! 

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 日本三大皮革産地のひとつである兵庫県姫路市に、分野を超えたアーティストを招聘し、姫路皮革のブランド力を高めようと新たな施設が誕生した。

 平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、同施設の運営にあたる一般社団法人L-A・I・R(エルエアー)代表理事・中島勇さんが出演。設立の経緯や伝統産業に対する思いを語った。

一般社団法人L-A・I・R(エルエアー)代表理事・中島勇さん(写真中央)、番組パーソナリティーの平田オリザ(同右)、田名部真理(同左)

 皮革産業に携わっていた祖父の影響で、子どものころから皮革に興味を抱いていた、中島さん。高校卒業後、5年間のドイツ留学を経て、革のスペシャリスト「レザーマイスター」の資格を取得した。帰国後、1990年11月に株式会社レザーマスタージャパン(現:株式会社ユニタスジャパン)を創業し、2000年3月にはユニタスファーイースト株式会社を設立。世界中の皮革に携わる有名ブランドや家具メーカー、高級車メーカーが認める“レザーマスター”製品の販売・メンテナンスを手がけてきた。

 現在は、メーカー担当者の指導はもとより、初心者向けワークショップの開催やキット販売、革作家に向けて貸し工房や無償の展示スペースを設けるなど、あらゆる角度からレザーの魅力を体感できるコミュニケーションスポット「ペレテリア」(兵庫県姫路市)の運営なども行っているという。

「とにかく、日本の皮革産業を盛り上げていきたいという思いがあります」(中島さん)

 そんな中島さんが現在、もっとも危機感を抱いているのは後継者不足だ。平安時代の文献にも記述されているという姫路の皮革産業は、源流域に生野銀山を有する市川の穏やかな流水と、流域の地下水が皮革の製造に適していたことに加え、広い河原があったことから発展を遂げてきた。皮を水にさらして冬場に毛根をすべて抜き、菜種油と塩で鞣(なめ)すと美しい白革が出来上がった。

 皮を鞣す技術はタンナー(工房・技術者)ごとに受け継がれ、現在も日本で生産される革の約7割が姫路で作られているということは、まだまだ知られていない。近年、生産機材の進歩により工業化は進んだが、環境への配慮や世代交代などの課題がある。

 こうした側面をアートの視点で解決していこうと、今年2月に一般社団法人L-A・I・Rを設立。姫路市高木エリアに位置する、レジデンス・スタジオ・展示ホールを備えた施設を拠点に、分野を超えた国内外のアーティストやクリエイターらが同エリアに実際に滞在し、「皮革」という素材をさまざまなアプローチでとらえて制作を行うことで、新たな表現を通して世界に「皮革」を発信していく。

今月完成したばかりのアトリエ棟
アトリエ棟内部の様子

「L-A・I・R」という名称の「L」には、「Leather(革)」「Love(愛する)」のほかに、いま行動しないと未来を失ってしまうということから「Lost(失う)」という意味が。また、「A・I・R」は「Artist In Residence」の頭文字から取っており、活動内容とさまざまな思いが込められている。

「革という素材は、“オーダーメイド”として扱われることが多いんです。職人は、オーダー通りに再現する能力は非常に高い。しかし、一からブランドをつくったり、色を創造するのは難しかった。ここ(ブランド設立や色の創造)にアーティストの視点を加えることで、『革職人とともに新たな革の魅力を創造できるのではないか』『作り手と訪れる方々が接点を持つことで若い人も育っていくのではないか』と考えています」(中島さん)

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