「ペニシリン」「コーンフレーク」「豚骨ラーメン」に共通するのは何でしょうか? じつは、これらはすべて“失敗から生まれた産物”だといわれています。あの発明家トーマス・エジソンが「失敗は成功の母」という名言を残したように、世の中には偶然から生まれたものが多くあります。そんな偶然から生まれた「偶然サンダル」が、いま話題を呼んでいます。
「偶然サンダル」とは、トイレや病院などで見かける 「便所サンダル(通称:ベンサン)」や「漁業(漁協)サンダル(通称:ギョサン)」の製造過程で生まれた、商品にならないB品です。
製造上どうしても生まれてしまうB品を商品として生まれ変わらせた、株式会社川東履物商店(奈良県大和高田市)の川東(かわひがし)さんに話を聞きました。
――「偶然サンダル」はどのような商品?
【川東さん】 奈良県はベンサン発祥の地であり、国内産のほとんどが奈良県で製造されています。ベンサンは、製造の特徴から色の混ざり合ったB品がどうしてもできてしまいます。色が混ざり合いマーブル柄になった規格外品を「偶然サンダル」として販売しています。
――なぜ色が混ざり合ったサンダルができる?
【川東さん】 ベンサンは、溶かした樹脂ペレットを金型に流し込むことで成形されます。「射出成形」と呼ばれるこの製造方法は通常、単色の製品です。しかし、樹脂の色を切り替える際に、切り替え前後の色がどうしても混ざり合うのです。こうして、自然発生的にマーブル模様の製品が生まれます。
――販売に至った経緯は?
【川東さん】 長年付き合いのあった近隣の協力工場によく出入りしていたのですが、ふとした雑談で色が混ざって出てくるB品の存在を知りました。本来の客先へは納品できず保管していると聞き、見せてもらいました。それを見てマーブル模様や個性が魅力的だと感じ、工場から買い取って、実験的に展示や販売を開始しました。
――なぜ規格外品を保存していた?
【川東さん】 単純に、もったいないというのが理由の一つです。協力工場の方によると、じつは、企業秘密である特殊な方法であれば再利用することも可能なのだそう。極一部のサンダル愛好家の間では、レア物アイテムとしてB品の引き合いがあったそうですが、我々のような大きく在庫を買い取るような動きではなかったと聞いています。