幼少期の子どもにとって、絵本を読み聞かせることは「大切」だとはわかりつつも、彼・彼女らはかなり自由。最後まで聞いてくれなかったり、どこかに行ってしまったりすることもしばしば。また、「読み方はこれであっているのか」「絵本選びは間違っていないか」など、“自己流の読み聞かせ”に疑問を持つこともあるのでは?『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』など、著者を持つ絵本未来創造機構の仲宗根敦子理事長に話を聞きました。
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仲宗根さんによると、6才までの子どもは感覚やイメージなどの機能が集まる右脳が優位であることから、それを踏まえた上での読み方がおすすめとのこと。その上でおさえるべきポイントは「3つ」あるのだとか。
【ポイントその1】ゆっくり読まない
子どもが内容をしっかり理解できるように……という思いからゆっくりと読み聞かせをしがちですが、これに対して仲宗根さんは「自然な会話のスピードで読むのがおすすめ」とのこと。「6才までの子どもは言語を十分に理解することがまだ難しい時期。完全に理解させることよりも、読み切って物語を一緒に共有できたという経験が大切です。絵本を読んでいて途中で子どもが退屈したり飽きてしまったりすることもあると思いますが、そんな悩みを解決してくれる手段にもなります」と仲宗根さんは言います。
【ポイントその2】声色を変えない
絵本を読む時はついつい登場人物によって声色を変えたり、展開の緩急で声の大きさを変えたりと力を入れて演技しがちですが、このやり方はおすすめしないとのこと。仲宗根さんは「読み手が絵本に感情移入をして世界に入り込むのは自然なことですし、意識して棒読みにする必要はありません。ただ、子どもと親の感動するポイントが同じとは限りません。心を育てるという観点でそのポイントを押し付けるのではなく、子どもが物語のどこに感動して面白がるのか考える余地を与えてあげることが大切です」と説明。
【ポイントその3】読んだ後に子どもをほめる
「よく聞いていたね」など、子どもが最後まで話に耳を傾けられたことについて褒めるのもポイントだそう。仲宗根さんによると、子どもに「また読んで欲しい」という気持ちを抱かせたり自己肯定感を高めたりすることで、絵本を好きになってもらうことができるのだそう。
読み聞かせ絵本選びのポイントも教えてもらいました。「話が長すぎたり難しすぎるものはおすすめしません。というのも、子どもの実年齢より対象年齢の高い絵本を選びがちなご両親が意外にも多いんです。対象年齢を下げて絵本選びをすることに抵抗があるのは理解できますが、大事なのは子どもがしっかり楽しめて最後まで聞けるかどうか。読んでいる途中に飽きてしまうなら、その絵本は子どもにとって合っていないということ」(仲宗根さん)
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「絵本を読むことは子どもと物語を共有するということ。一緒に遊園地に行って楽しむぐらいの価値があります。“共に時間を過ごすツール”として絵本を楽しんで欲しい」と、最後に仲宗根さんは締めくくりました。子どもの成長のために、親が必要以上に気負う必要は無いのかもしれませんね。
(取材・文=宮田智也)
◆『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』(仲宗根敦子/パイ インターナショナル)