広告をはじめ、舞台や映画など、表現のジャンルを超えて世界で活躍したデザイナー・石岡瑛子の仕事の軌跡をたどる展覧会「石岡瑛子 I(アイ)デザイン」が、兵庫県立美術館で開かれている。2024年12月1日(日)まで。
会場に並ぶのは、石岡瑛子が東京を拠点にしていた1960年代から80年代の広告の仕事を中心に、センセーションを巻き起こした広告ポスターやCMアートワークなど400点を超える。生涯にわたりデザインに情熱を燃やし続けた本人の言葉とともに紹介する。
広告の作り手は、依頼主の注文に寄り添う表現を目指すが、石岡は自分がまず何を主張したいかと考え、強い表現を生み出すためには、核となる「 I (アイ)=自分」の存在が不可欠だと考えた。広告に携わる写真や映像、イラストなど多様な分野のプロフェッショナルと共同作業を重ねることで、自分を磨いていった。とことんこだわって生み出された作品には圧倒的なパワーが宿っており、そこから石岡の声が聞こえてきそうだ。見ている側は知らず知らずのうちに引き込まれてしまう。
大学卒業後、就職した資生堂宣伝部では、健康的で、強い意志を持つまなざしの女性像を打ち出し、それまでの「人形のような美人」のイメージを覆して大きな反響を得た。その後フリーランスとなり、1973年に開業した渋谷パルコと出会う。パルコとはいったい何者なのか。「新しい時代」の象徴としてのパルコのブランドイメージを築く上で中心的な役割を担った。新しい時代に、自分の考えと価値観を持って生きようとする人々に向けて、「私」の主張を出した挑戦的な広告を次々と生み出し、センセーションを巻き起こした。
また石岡はポスターやブックデザインも多く手掛けた。直筆のスケッチや校正紙も併せて展示する。ブックデザインはフリーランスになって以降、力を入れていたといい、表紙やカバーといった「衣」だけでなく、紙質やサイズ、文字組みなどの「ボディ(本体)」、時には企画や内容にまで関わった。会場では初公開となる1970年代の小中学校の教科書も展示されている。