滋賀県を走るローカル鉄道の1つ、近江鉄道本線(彦根・多賀大社線)の米原駅のひとつ手前に、フジテック前という駅があります。ここから歩いて15分ほどの田園地帯の一角に、電車の元運転士が営む面白い古民家カフェがあるんです。
ちなみに、フジテック前駅は、駅名が示す通り、近くにエレベーター大手製造メーカーのフジテックの本社があります。大阪・茨木市から2006年に移転してきたのを機に、ここに駅が誕生しました。高さ170メートルと県内一高い建造物のエレベーター研究塔は、いまやまちのランドマーク。それを目印に駅から西へ進むと、見えてくるのが「宮田町カフェ」です。
築100年の古民家を改装したカフェは、今年4月にオープンしたばかり。オーナーの曽根正幸さんは電車の元運転士。地元の近江鉄道を皮切りに、長野電鉄・富山地方鉄道・富士急行の4社で35年間に渡って運転に携わってきました。
カフェに先立って宮田さんの運転士歴も、鉄ちゃんアナとしては見過ごすわけにはいきません。
近江鉄道は最大2両編成なので、「もっと長い編成を運転してみたい」と思い、沿線に温泉もスキー場もある長野電鉄へ移籍。ここで10年間務めますが、この会社は40歳になると現場から管理職への道を歩む規定があったため、引き続き現役で運転士ができる富山地方鉄道や富士急行に移ったそうです。
鉄道の運転士は国家免許なので、これさえ持っていれば渡り歩くことも可能なんですね。“ガチャコン”(近江鉄道)から“スノーモンキー”(長野電鉄)や“フジサン特急”(富士急行)、そしてJR乗り入れ車両まで運転できるとは……なんとうらやましいことでしょう!
コロナ禍になり、両親も亡くなったこともあって、住んでいた東京からこの彦根の実家に戻ってきたという、曽根さん。その地で春から古民家カフェを営んでいます。もともと関東在住の時にも鎌倉などの古民家カフェによく出かけていたことから、その経営に興味があったといいます。
この店のランチのメニューは一品だけ。もともと料理人ではないということもあって、多くの料理は作れないと考え、研究を重ねたビーガンカレーに絞りました。
動物性食品をいっさい使わないのに、食べてみると、なぜこんなにコクと味わいがあってスパイシーなのかという不思議なカレー。トッピングには自らが畑で育てた新鮮な野菜たち、ナス・レンコン・カボチャ・ピーマン・ポテトなどの素揚げが色あざやかにのってきます。これに豆乳スープ・サラダ・湧き水珈琲がついて1600円(税込み)。ランチは予約が必要で、木~日曜の午前11時~午後2時です。