いま、意外な“あるもの”がおもちゃになって発売され、SNSを中心に話題を集めています。その意外なものというのが、「AED」です。いざというときのため、学校や職場で使用方法の講習を受けたことがある人も多いのではないでしょうか。
なぜ、救命機器をおもちゃにしたのか? AEDのおもちゃ「トイこころ」の考案者であり、AED販売も行う株式会社坂野電機工業所(北海道)の坂野社長に話を聞きました。
――なぜ、AEDのおもちゃを作ろうと思った?
【坂野さん】「子どものころから触れることができれば、AEDをもっと身近に感じられるかもしれない」と考えたのが、一番の理由です。私自身、もともと医療現場で働いていたのですが、当時から「AEDをもっとなじみのある存在にしたい」と強く感じていました。
しかし、講習などで1度使い方を教わっても、改めて街中で実物を見ると“なんだか触ってはいけないもの”というイメージから、実際に使うとなると「ちょっと勇気が出ないかも」と思われる方も多いのではないでしょうか。
そこで、AEDとの出会いが、講習などの“やらされ感”のある場ではなく自ら楽しんで学べる“遊び”のなかであれば、AEDへの抵抗感をなくせるのではと思い、おもちゃにすることを考えました。
――商品化までの経緯を教えてください。
【坂野さん】 まずは、皆さんの反応を知りたいと思い、3Dプリンターで試作品を作ってX(旧:Twitter)に投稿してみたところ予想以上の反響があり、50万件近くもの反応をいただきました。
社会でも必要とされていると確信を得て、いざ製作に取りかかったのですが、おもちゃ作りの素人が手がける前代未聞のAEDのおもちゃ。こんな売れるかどうかわからない商品を、しかも資金の関係で小ロットだけなんて、まともに取りあってくれる会社はほとんどありませんでした。
そんななか、たまたま連絡をしていた有限会社スワニー(長野県)の代表が「かつてAEDの普及に関わる商品開発をしていたことがあって……」と、まさかの縁でコンセプトに大変共感してくださり、協力してもらえることになりました。そこから、モノ作りに長けたエンジニア集団であるスワニーさんと二人三脚で、約1年をかけてなんとか商品化までたどり着くことができました。