東北地方での初めての公立美術館として1981年に開館した宮城県美術館のコレクションから、明治・大正・昭和にかけての近代絵画を紹介する特別展「響きあう絵画 宮城県美術館コレクション カンディンスキー、高橋由一から具体まで」が、神戸ゆかりの美術館(神戸市東灘区)で開催されている。2025年1月26日(日)まで。
宮城県美術館は、1981年に仙台市に開館した。宮城県や東北地方にゆかりのある作家の作品をはじめ、ヴァシリー・カンディンスキーやパウル・クレーなど海外作家の作品も多く所蔵しており、その数は7000点を超える。現在、大規模改修工事中で、この中から74点が神戸にやって来た。「日本近代絵画の歴史・流れがわかる、ポイントがぎゅっと詰まった教科書のような展覧会です」と神戸ゆかりの美術館の辻智美学芸員は話す。
宮城県美術館のコレクションの原点となった作家の一人が、近代絵画の開拓者ともいわれる高橋由一。「教科書にも作品が必ずといっていいほど登場する作家」(辻学芸員)で、宮城県からの依頼を受け、同県を代表する風景を油彩画で制作した。『松島五大堂図』に描かれているのは景勝地の当時の姿だが、その風景は今も変わっていないことがわかる。また、『宮城県庁門前図』は、県庁舎として使われていた元仙台藩の学問所・養賢堂の講堂を描いたもの。「絵の具やパレット、キャンバスなどはすべて手作り。キャンバスには麻布が使われることが多いのですが、この作品には綿布が使われている珍しい例です」と辻学芸員は言う。
作家であり画廊主でもある洲之内徹が残した「洲之内コレクション」も見どころのひとつ。どれだけ「譲ってほしい」と頼まれても決して手放さなかった伝説的な名品や、コレクターとして光を当てた画家たちの絵が含まれている。会場には「有名な作家はもちろん、知る人ぞ知る作家の作品」が並ぶ。長谷川潾次郎は、集中して丁寧に描き込むため「遅筆で有名だった」という。『猫』は、毛1本1本が緻密に描かれていて毛並みの手ざわりまで伝わってくるようだ。ただよく見ると片方のヒゲが描かれていない。
宮城県美術館は、海外作家の作品も多く所蔵する。中でもカンディンスキーとクレーは国内有数のコレクションを誇る。
カンディンスキーの『「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)』。アメリカ・ニューヨークの近代美術館が所蔵する4点組連作のうち1点の「習作」で、「色などに違いはあるが完成形に近い」作品だという。また、カンディンスキーに関連の深いドイツ表現主義の作品もあわせて楽しめる。