「大正浪漫」を象徴する画家であり、詩人でもあった竹久夢二(1884~1934年)の展覧会「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」があべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で開かれている。夢二が手掛けた油彩画に焦点を当てた展示で、80年の時を経て近年発見された“幻の美人画”も公開。3月16日(日)まで。
夢二は明治から大正、昭和にかけての日本近代美術・文化の立役者的な存在。独特の叙情性が魅力の「夢二式美人」で一世を風靡した。絵画だけでなく雑誌や楽譜、日用品のデザインまで、幅広く創作活動を展開。当時の女性たちは夢二が描く美人画の髪型やスタイルをまね、夢二デザインの半襟や帯、浴衣を身につけておしゃれを楽しんだという。
本展では、夢二郷土美術館(本館・岡山市)所蔵のコレクションから選りすぐった約180点を展示。日本画のイメージが強い夢二の、これまであまり注目されてこなかった油彩画家としての一面に光を当て、現存する油彩画約30点のうち13点を紹介している。
中でも目玉は、約80年ぶりに見つかった「アマリリス」(1919年ごろ)。同作は1919年、福島で開催された展覧会に出された後、東京のホテルの応接間に飾られていたが、その後長らく所在不明だった。あべのハルカス美術館の横山志野学芸員は「日本画の夢二式美人が完成されたころに、西洋の油彩的表現で夢二式美人に挑んだ作品で、たいへん貴重。女性とアマリリスの花が融合しているように描かれている点は、西洋絵画から着想を得ているようにも思える」と指摘。夢二が「人物の内面は顔と手に表れる」と語っていたことを挙げ、「女性の表情とともに、大きく描かれた特徴的な手に注目してほしい」と話す。
夢二がアメリカ外遊中に制作した油彩画の大作「西海岸の裸婦」(1931-32年)も屈指の見どころ。アメリカから送られてきたフェイスブックのメッセージをきっかけとし、夢二郷土美術館に収蔵された作品で、現存する油彩画の中で唯一の外国人女性をモデルとした裸婦像だ。抜けるように白い女性の肌は、2種類の白い絵の具を使用、また当初は緑一色だった背景を、黄土色を重ねてストライプ調に描き替えたことも科学調査によって判明したという。