兵庫県中小企業家同友会(神戸市中央区、会員数約2400社)は20日、会員企業を対象に行っている景況調査の2024年下期の集計結果を発表、売上高、経常利益ともに同年上期から増加し、25年前期も引き続き改善が見込まれる見通しであることを明らかにした。
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同会のNTレポート(景況調査)編集を担当した吉川晃史・関西学院大学商学部教授(コスト・マネジメント)が同区内で開かれた発表会で報告した。調査は会員の2249社に依頼、うち1656社から回答を得た(回答率73.6%)。吉川教授によると、売上高DI(「増加」-「減少」割合)は16から25に、経常利益DI(同)も11から18に改善。25年前期も同様の状況で見込むものの、円安、値上げ、原油高などのコスト高で不安要素もあるという。
問題は慢性的な人手不足で、最低賃金の改定により賃上げを行った企業の中には人件費が増えたことが経営の課題になっているケースも。今後も賃上げ傾向が続く中、企業経営に悪影響が出ないようにするため、商品の販売価格を上げるなどの道を模索する必要があるという見方を示した。また、外国人雇用については製造業を中心に進んでいる傾向がみられた。
吉川教授は人材確保と定着のポイントとして▽年間休日の目標を定め、休日確保のために必要な設備投資を行い、業務の効率化を進める▽自社や若手従業員の活躍を取り上げ、SNSを通じて若者の共感を得る、などの方策を挙げた。
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後半では「外国人・障がい者雇用など多様な人材の雇用」「最低賃金額上昇への対応」をテーマとした、会員企業の事例報告が行われた。
病院や介護施設を専門とした清掃会社「nokoso」(神戸市北区)は30人のスタッフのうち8人がカンボジアからの技能実習生。14年ほど前、河野伸太郎社長自ら現地に赴き2人の実習生と1人の通訳を受け入れたのが始まりという。河野社長は雇用したカンボジア人スタッフの定着を図るため、日本における掃除の大切さやお金にしばられない生き方などを伝授。地元の祭りに参加してもらい、日本文化に触れる機会もつくっている。一方、スタッフの労働賃金を上げるため、発注元と契約料金の引き上げを交渉したところ、中小企業は理解を示したが、大企業の担当者からは「外国人を雇っているから(支払う賃金は)安いよね」と言われ、契約を切られそうになったことがあったという。河野社長は「大企業の人たちには中小企業と手を携えようという考えがなかなか見当たらない」と訴えた。
「鈴木在宅ケアサービス」(同市垂水区)の鈴木健太郎代表取締役は、同社が2022年から取り組む高齢者、障害者向けの外出サポート事業を紹介。介護福祉士の資格を持つドライバーが付き添いながら希望先へと連れて行くサービスで、これまでに孫の結婚式や阿波踊りの見物などへの利用があったという。鈴木代表取締役は「会社の基盤である介護保険サービス事業と新たな介護保険事業との組み合わせでシナジー(相乗効果)を発揮させ、地域密着型の活動を広げ、目まぐるしい外部環境の変化を乗り切りたい」と話した。
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