2月19日から24日までオリックス劇場(大阪)で上演される「JAPAN THEATER『SEIMEI』Supported by 飯田グループホールディングス」の公開ゲネプロと取材会が19日に開催され、そのオフィシャルレポートが到着。
同作は、平安時代を舞台に、陰陽師の安倍晴明と平安京の四方を守護する四神の姿を描く物語。京都の結界を守るために召喚された四神のうち、朱雀が晴明を裏切って第六天魔王に追従したことで、世の中に暗雲が立ち込める。晴明役を市川團十郎、朱雀役を嶋﨑斗亜(Lilかんさい)が演じ、演出は広井王子、楽曲はSUGIZO、神楽振付はケント・モリが担当。日本が世界に誇る才能が結集し、歌舞伎と現代劇を融合させた新しいエンターテインメント作品となっている。
そんな『SEIMEI』の見どころの一つは、陰陽師として名を馳せる晴明の人間味。特に晴明が朱雀に裏切られる場面は、その無念さがひしひしと伝わってくる。それをきっかけに精神的に追い詰められていく晴明の感情を、團十郎が味わい深く演じている点にも注目だ。一方、人間の慢心、驕り高ぶりへの落胆が寝返りへと結びつく朱雀の心境の変化にも共感できるはず。嶋﨑が、神々と人間のあり方について揺れ動く朱雀の複雑な思いを丁寧に表現。そして、この二人が相対する立ち廻りの場面は大きな見せ場にもなっている。

さらに『SEIMEI』の妖艶かつ壮大な世界観を盛り上げているのが、SUGIZOが書き下ろしたオリジナル楽曲だ。團十郎らの歌舞伎の芝居や長く伝わる安倍晴明の物語と、SUGIZOによるギターなどを使用した音楽の絡み合いが堪能できるのはまさにこの作品だけ。またケント・モリが振付を手がけた、嶋﨑の神楽も圧巻。神楽の伝統的な動きを基調にしながらも斬新なイメージを与え、美しく、ダイナミックに舞う嶋﨑の姿に目を奪われる。
そして公開ゲネプロの後には取材会が開かれ、市川團十郎、嶋﨑斗亜、広井王子が出席。

広井は同作について「晴明が人間臭く悩みながら、四神と一緒に悪を倒すということが台本には書かれていました。それを一字一句変えず、そのまま舞台にしています」とし、「それをキャストのみなさんが華にしてくれました。いろんな部分で新しい歌舞伎になったと思います」とアピール。続いて嶋﨑も「歌舞伎ではなかなか取り入れることがないような音楽や振付が組み込まれています。自分と近い年齢の方でも見やすい演出になっているのではないでしょうか」とコメントした。
また團十郎は、SUGIZO、ケント・モリらが参加していることについて「多くの方々の才能を感じる作品です。歌舞伎は伝統を踏まえて動いていくので、その枠からはみ出る行動や動き、台詞、音はないんです。でも今回は歌舞伎とは別の空間で、世界で活躍されている方々が力をくださって、建設的に物事を立てた演劇。我々のお芝居も一つ羽が生えて、彩りも豊かになりました」と唯一無二の作品になったと言う。さらに「日本の方々の才能が、歌舞伎をベースにしながら多くの方々に見ていただけるようになっています。海外の方々にも見てもらえる機会を作っていけたら」と上演規模の拡大に意欲を見せた。
ちなみに團十郎と嶋﨑は今回初共演。嶋﨑が「稽古場に團十郎さんがいらっしゃると、僕自身も身が引き締まります」と話せば、すかさず團十郎が「普段は締まっていない? 今までは締めていなかった?」とツッコミを入れるなど、息のあった掛け合いを披露。嶋﨑も「團十郎さんは普段、ボケたりもされるんです。舞台の中で精霊が出てきますが、御霊役の市川升三郎さんに毎回『え、精霊?』と聞くんです。團十郎さん的には、升三郎さんが精霊に見えないようで。(そういうボケに対して)千秋楽にはガツガツとツッコめるようになりたい」と、公演期間中に團十郎との距離を縮めていくことを宣言した。
一方、團十郎は、嶋﨑について「若さっておもしろいなって思います。その切り口でいけるんだという強みがある。四神役の3人が歌舞伎俳優で、自分だけ違う毛色で挑むことになる。もっと苦悩があると思っていたけど、それを乗り越えていく躍動感があった。気にしていたとしても、気にしていないように見えるのがいい」と絶賛。
それらの話を受けて嶋﨑自身は、歌舞伎俳優陣とは異なる自身の台詞回しなどについて「急に台詞の発し方が現代に寄ってしまうのではないかということは、気にしていました」と振り返り、「僕がいなくても(この舞台を)作り上げられる方たちの中に、僕が入る意味を見出したい。僕にしか出せない若さの華を、この舞台にプラスできたらなと思います」と意気込んだ。
