3月は出会いと別れの季節。新たな生活にワクワクする一方で、引っ越しとなると面倒なことも多く様々な費用がかさむもの。とくに、部屋を借りる際にかかる「敷金・礼金」は引越し費用において大きなウエイトを占め、物件選びの際の悩みどころとなる人も多いのでは?
調べてみると、敷金や保証金が家賃の支払いが滞ったり部屋の修繕に充てられたりする「法的根拠のある費用」である一方で、礼金だけはそうではないといいます。では、礼金とは一体どういった費用で、何のために存在するのでしょうか。一般財団法人日本不動産コミュニティーの代表理事・浦田健さんに聞きました。
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浦田さんによると、礼金を支払うのが当たり前になっているのは歴史的な背景からであり日本独自の習慣で、実は法的根拠の無い費用」なのだとか。
浦田さんは「諸説ありますが」とした上で、ふたつの歴史的背景を教えてくれました。
【謝礼説】
この説は、1923年に発生した関東大震災が関係していると浦田さん。この時は、家の倒壊や火事による消失などで被災地では部屋不足に陥り、一気に「部屋の貸し手市場」になったそう。そんな中、大家にこっそり“謝礼”を渡すことによって部屋を優先的に都合してもらったのが礼金の始まりであり、その名残りが今の礼金になっているといいます。
【ご厄介金説】
高度成長期の1960年代は地方から集団就職などで東京に下宿する学生が増加。そのため、彼・彼女らの親が大家にあてて「ご厄介かけますがどうぞよろしくお願いします」という意味合いを込めて贈ったものが礼金になったとか。
「いずれの説にも共通するのは、大家からの“ひいき”目当てで支払われていたお金であるということ。そして東京で生まれたこの習慣が、のちに地方へ広がっていったのだと思われます」(浦田さん)
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ちなみに、大阪や北海道などはこの礼金の習慣が根付かなかった地域であり、全国一律で礼金が必要となっているわけではないのだそう。