神戸電鉄の駅の一つ、有馬温泉駅(兵庫県神戸市北区有馬町字ウツギ谷)がこのほど再整備され、2月6日から新装された駅舎の利用が始まっています。リニューアルされたきっかけや、工事期間中に苦戦した点、新しく設置されたモノなどについて、担当者に話を聞きました。

1989年に、「有馬クリスタルビル」の一角にオープンした有馬温泉駅は、“有馬温泉の玄関口”としての役割を担い、利用者の大部分は観光客が占めているそう。最近は、インバウンドの需要上昇に伴い、海外から訪れる人も増加。他にも、六甲山系に向かう人や、地域住民にも重宝されている駅です。
神戸市と「神鉄沿線リノベーションに関する連携協定」を結び、駅を中心としたにぎわいのある街づくりを目指している、神戸電鉄。過去には、花山駅、大池駅の駅舎の建て替え、駅前広場の整備などにも取り組み、2023年3月に両駅ともリニューアルが完了しています。
有馬温泉駅の再整備計画は2022年から進み、2024年7月から工事がスタート。約8か月を経て無事に工事が終わり、今年(2025年)2月6日より供用が開始されました。
同駅の工事期間中に苦戦したポイントについて、技術担当者は「デザインには“正解”がないゆえに悩みました。担当者、設計者、施工者でアイデアを出し合い、専門の方にもアドバイスをもらいながら、丁寧に時間をかけて一つひとつ決定していきました」と振り返ります。また、旅客動線を確保する方法や、夜間作業での騒音対策についても綿密に協議が行われたといいます。
リニューアル後のデザインコンセプトは、「『和』の風情が感じられ、温泉街との一体感を醸成する空間」と、「駅をご利用になるすべての方にとって憩いが感じられる安らぎのある空間」の2つ。
まずは外観。壁に木の縦格子を取り付け、欄干は、温泉近くにある太閤橋をイメージしたデザインに。温泉の洗い場の椅子をモチーフとしたベンチも設置され、「パッと見ただけで、“温泉街の中にある駅なんだ”と感じてもらえるようなデザインにしました」(広報担当者)。


コンコースには、新たに待合室を完備。ベンチの座面にシートヒーターを搭載し、寒い冬でも快適に過ごすことができます。壁や床には、滝や木漏れ日などのプロジェクションマッピングを投影し、和の雰囲気を演出。インバウンド向けに、サインなどの表記に新しく“英語”も加えたそうです。

温泉の洗い場をイメージしたようなベンチがあるホームには、登山で訪れる人のニーズに応えるべく、靴の洗い場も備えられました。照明は、有馬伝統の竹細工をモチーフとしたデザインが採用されています。