3月に入り、少しずつ春に近づくこの季節。あと1か月もすれば、ピカピカのランドセルを背負った初々しい小学生を見かける季節が訪れます。
かつては赤や黒が一般的だったランドセルですが、近年は水色や紫をはじめとした色とりどりの商品が定番になりつつあります。そんないま、話題を集めているのが「甲冑ランドセル」です。名前の通り、まるで将軍が身につける甲冑のようなデザインが施されています。そんなランドセルの製造・販売を行っている株式会社村瀬鞄行(名古屋市)に話を聞きました。

同社は、1957年創業の老舗ランドセルメーカー。昨年10月末に甲冑ランドセル、正式名称「赤色小札黄銅鋲背嚢具足」(あかいろこざねおうどうびょうはいのうぐぞく)の販売を開始。価格はなんと、50万円(税込)とのことです。
開発のきっかけは、素材のロスを削減するためでした。ランドセルのふたである「カブセ」を作る際、最高級素材のコードバンの端切れがどうしても出てしまうのだそう。端切れはランドセル製造で使い道がなかったことから、ランドセルで使えるように小さいパーツの形にカット。それらを組み合わせることで、甲冑のパーツ「小札(こざね)」を含めた和風デザインを表現することを考えました。
同商品を制作したのは、以前から「甲冑のようなランドセルを作りたい」と考えていたランドセル職人。完成作品を、国内最大級の革製品コンテスト『JAPAN LEATHER AWARD 2024』に応募したところ、アーティスティックデザイン賞を受賞しました。
ランドセル職人の“もったいない精神”から、多くの人に知られる甲冑ランドセルが誕生したのです。
とはいえ、「革で甲冑を作るのは一筋縄ではいかなかった」とのこと。開発当初は、本物の甲冑と同様に糸を使って小札を鵜(う)につけることを考えたものの、手間がかかることから断念。本来のランドセルパーツである鋲(びょう)で留めることで、甲冑のようなデザインができあがりました。
完成作品には、最もインパクトのあるカブセだけでなく、側面にもランドセルのパーツを使った「鬼瓦(おにがわら)」などが施されています。


同商品は、公式ホームページからの受注生産。1個50万円と一般的なランドセルと比べると高額ではありますが、これまでに数件の依頼があったといいます。“日本らしさを感じられる”という点から、海外のお客様が購入することもあるそうです。
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甲冑ランドセルの製作者・岡田さんは、全国でも数えるほどしかいない、鞄技術認定1級を所持する鞄職人。通常のランドセルを制作するときの緻密な技術によって、甲冑ランドセルは完成しました。
将軍気分を味わえるランドセル。世界中で見られる日がくるかもしれませんね。
※ラジオ関西『Clip火曜日』2025年3月6日放送分より