1100年以上の歴史を誇る、兵庫県・姫路市の皮革産業。その伝統を受け継ぎながら、新たな可能性を切り拓いている人物がいます。
その人とは、一般社団法人L-A・I・R (エルエア)代表理事の中島勇さん。世界に認められるレザー製品を手掛けながら、近年「アート」と「皮革」の融合にも力を入れているという姫路市出身の“レザーマイスター”。皮革のスペシャリストである彼の挑戦とは何か、詳しく取材しました。
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皮革製造会社(タンナー)の家に生まれ、祖父の影響で皮革に興味を持ったという中島さん。高校卒業後は、さらなる高みを目指しドイツへ留学しました。言語の壁を乗り越え、取得困難な「ゲルバーマイスター」(英語ではレザーマイスター)の国家試験を受け、見事資格を取得しました。
ヨーロッパの職人と日本の職人の違いを聞いてみたところ「本人に技術があるかどうかだけではなく、後世の人を育てる能力があるかといった点も非常に重要視されるところ」と中島さん。「ドイツのマイスター制度というのは、自分の能力や技術の伝承に加え自分を超えていく職人や技術を育てていくというところに特徴がある。帰国して、改めて実感しました」と話します。
姫路の皮革産業の歴史は平安時代までさかのぼります。「市川の水・赤穂の塩・晴れの多い気候」という自然条件が革づくりに適していたことから発展、現在では国産牛革の約7割を生産する日本有数の産地となりました。
番組パーソナリティの清元秀泰姫路市長は「食肉加工された後の皮を、余すところなく使用することにも繋がる皮革産業。SDGsの観点からも大切なことだと感じています」とコメント。
そんな伝統産業に、今新たな風が吹いています。中島さんはアートとの融合を推進し、国内外のアーティストを姫路に招聘する「アーティスト・イン・レジデンス(L-AIR)」を立ち上げました。これは、革の魅力を多角的に表現し、新たな発想を生み出す試みだといいます。


「タンナーはクライアントの要望に応じた革を作る職人ですが、『新しいものを生み出す』といったクリエイティブ的な訓練は受けていません。だからこそ、アーティストとのコラボが重要なんです」と中島さんは語ります。