乗客106人が死亡、562人が負傷したJR福知山線脱線事故から25日、20年を迎えた。
今年もJR西日本主催の追悼慰霊式が、慰霊施設「祈りの杜 福知山線列車事故現場」(尼崎市久々知)で開催される。
「祈りの杜」は2018年秋に整備が完了し、2019年の慰霊式から、それまでの「尼崎市総合文化センター・あましんアルカイックホール」から場所を移して行われている。
遺族や負傷者にとって、この場所への思いはさまざまだ。「慰霊式は事故現場で開くのが本来のあり方だ」「『なぜ、この場所で命を落とさねばならなかったのか』と亡き娘が問いかけてくる。それが再発防止への誓いだ」との意見もあれば、「この場所に亡くなった人はいない。それぞれの心の中で生きている」と考える人もいる。「1人の被害者として、慰霊式でほかの被害者と会い、ともに『生きて行こう』という気持ちを新たにしたい」、「本当は一番行きたくない、つらい場所だが、私の人生を変えた一番忘れられない場所だ」と思いを語る負傷者もいる。
そして、事故の当事者はみな、「目を閉じれば、あの青空を思い出す」と話す。

事故の風化が懸念される中、JR西日本は2021年、大阪府吹田市の社員研修センターに整備する新施設での、事故車両や遺留品約1100点の保存方針を遺族や負傷者に伝えた。


現在の計画では、損傷が激しい1~4両目は部品ごとに整理して棚に収め、原形をとどめている5~7両目は連結した状態で配置するという。事故の痕跡が残るレールや枕木、電柱も展示し、事故当時の写真を実寸大でスクリーンに投影することも考えている。内部を一般公開するかどうかについては検討課題としている。
1985(昭和60)年の日航ジャンボ機墜落事故では、羽田空港の安全啓発センターで機体の残骸や部品などを公開するまで21年の歳月を費やした。
事故車両の保存方法などをめぐって、遺族の1人は「事故を知らない人が増えてくる。本来ならば車両は事故現場に戻し、人々に見てもらうのがよい」と話す。
また、ある負傷者の家族は、「被害に遭った人たちでないと語れない事故当時の真実の姿がある。それは発生直後に個々の目で電車内を見ているから。ありのままを示すことも重要だが、遺族と負傷者の心情も考慮し、過剰な刺激にならないよう、慎重に進めて欲しい」と要望している。




