鉄鋼業が盛んな、兵庫県姫路市の播磨臨海工業地域。この一角で長年にわたり地域産業を支えてきた企業のひとつが、創業70年の株式会社サンテェム。変化の激しい時代の潮流を地元と共に歩み続け、いま「100年企業」を目指し新たな一歩を踏み出そうとしています。同社の代表取締役・黒田俊行さんに詳しく取材しました。
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同社の始まりは、1955年に創業者・黒田行孝氏が個人で工業用品の販売を始めたことにあります。以来、播磨地域の工場ユーザーを中心に、機械工具から環境機器、安全保護具まで、幅広い工業製品を供給し続けています。
どのような時流においても、同社は柔軟に対応してきました。2000年問題や景気変動といった試練を乗り越えながら、地域に根差したものづくり支援を続けてきたといいます。「いつもお客様と一緒に考え、現場の課題を解決する。それが私たちのスタンスです」と黒田さん。

大きな特徴は、加工機能を備えた“生産財の専門商社”であること。つまり、必要な工業用品を販売するだけでなく、設計・製造・据え付け・メンテナンスに至るまで一貫して担える体制を整えているのです。この姿勢の根底にあるのが、「三方よし」という考え方。もともとは近江商人の商売哲学で、「売り手よし、買い手よし、世間よし」を意味します。これを現代的に解釈し「取引先・会社・社員、そして地域社会にもよい影響を与えよう」という理念を抱き、実践しています。

その一環として、環境への配慮や社員の健康を重視した取り組みも行っています。例えば、職場や事業そのものが環境に優しい状態を目指す「KEMS活動」や、経済産業省の「健康経営優良法人」認定を継続して取得。さらにユニークな制度として、社員の健康診断の結果が良好だと「健康手当」が支給される仕組みもあるそうです。
「社内運動会のあと、みんなで近所の飲食店で食事するのが楽しみなんです」と話す黒田さんの笑顔からは、社内の温かい雰囲気が伝わってきます。

現在、創業70年を機に本社社屋の建替えプロジェクトが進行中。木造と鉄骨を組み合わせた環境配慮型の設計で、「安心して働ける職場」であると同時に「地域のランドマークになる建物」を目指しているといいます。「将来的には『まずはサンテェムに相談すれば大丈夫』と思われる存在を目指しながら、調達や物流、加工などの機能をさらに強化。地域の製造業にとってのベストパートナーとして、“つなぐ力”をさらに高めていく方針です」と黒田さん。
「人と技術、そして地域を未来へとつないでいきたい」。そんな思いを胸に、播磨の地で挑戦を続ける企業の歩みは、これからも地域社会とともに進んでいきます。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西『谷五郎の笑って暮らそう』2025年5月25日放送分より






