「オレンジかたくり」「ミーコ」って何!? お洒落カフェと一線画す神戸の“大衆喫茶”カルチャーとは | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「オレンジかたくり」「ミーコ」って何!? お洒落カフェと一線画す神戸の“大衆喫茶”カルチャーとは

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 生まれも育ちも神戸市中央区でサブカル郷土史家の佐々木孝昌(神戸史談会、神戸史学会・会員)が、北区出身で落語家の桂天吾と、神戸のあれこれについてポッドキャストで語る『神戸放談』(ラジオ関西Podcast)連載シリーズ。今回のテーマは「喫茶店」です。

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 神戸っ子は喫茶店好きである。総務省の家計調査で「2022年~2024年平均の喫茶代への支出」を見てみると、都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキングで神戸市は9位である。過去に比べると近年、順位が落ちてきているが、それでもベスト10には入っている。喫茶店が多い神戸の繁華街や駅前などに慣れていると、地方へ旅行した時、喫茶店が見当たらず戸惑うことが多々ある。

 僕の父は毎週日曜の朝は近所の喫茶店へ通っていたので、小学校高学年になるまで一緒に付いて行ってモーニングを食べるのが楽しみだった。近所に何軒もある喫茶店の内、父は3軒のお気に入りの中からその日の気分で店を決めていた。その内の1軒はゲーム喫茶だったので、そこだとさらに楽しみは倍増だった。

 そんな近所の喫茶店の一つに、「大倉山ホワイト」があった。「ホワイト」とは、神戸発祥の大衆喫茶チェーンである。その創業は古く、『神戸とコーヒー』(神戸新聞総合出版センター)によると1926年に新開地に誕生した「湊町ホワイト」が1号店である。白い暖簾と“ホワイト”の共通ロゴが印象的で、同書によると最大で神戸市内に36店、大阪に30数店あった。その後、「ニッポン」や「ベニヤ」といった大衆喫茶チェーンも誕生している。

大衆喫茶「ホワイト」のロゴ:筆者撮影

 30年近く前「ホワイト巡り」をしたことがあるが、今では神戸市内に数店舗となってしまった。1936年創業と、ホワイトの中でも老舗の「宇治川ホワイト」(中央区)は、建物が取り壊されたので「閉店か?」と色めきだったが、最近建て替えられてリニューアルオープンしたのでひと安心である。

 ホワイトといえばミーコ(ミルクコーヒー)が代名詞のようになっているが、同店を含め大衆喫茶の定番メニューで僕的に印象深いのは「オレンジかたくり」である。オレンジ味のトロっとした片栗粉だ。風邪をひいた時によく母が片栗粉を作ってくれたが、まさにノスタルジックな味。その他、「あべかわ」「ぜんざい」「あめゆ」など和のテイストがあるのも特徴である。そして何より、“大衆”というだけあって安いのも嬉しい。

 昭和のエンタメ感がある店では、垂水区の垂水センター街にある1973年創業・喫茶レストラン「ブラジル神戸垂水店」。配偶者の実家に行くと必ず立ち寄る。メニューもバラエティ豊富。有名なのは、全長55センチのパフェ「マッターホルン」だ。家族4人で“登頂“したことがあるが、中々、たいらげるのには険しい道のりだった。

「ブラジル神戸垂水店」の外観と、名物のマッターホルン:筆者撮影

 ちなみに僕のお気に入りの喫茶店は、高校生の頃から35年通っている新開地の茶房「歌舞伎」である。北区出身の落語家・桂天吾君は、その近くの「松岡珈琲」が好きだとか。余談だが、新開地には僕が高校生の頃は有名な「エデン」を始め、「小町」「ベラミ」「モモタロウ」「一休」「フリージア」「アキラ」「ニッポン」「コトブキ」などなど現在は閉店した店も含めてたくさんの喫茶店があって、それらにもよく行った。

茶房「歌舞伎」(神戸市兵庫区):筆者撮影

 特に「歌舞伎」は、当時、コーヒーチケットを買って学校帰りに毎日のように行っていた。創業は1949年と老舗。建物は阪神淡路大震災で被災したので新しくなっているが、コーヒーも食べ物も変わらず美味い。喜楽館の隣なので、店内には落語家さんのサインがたくさん張られている。天吾君が出演の折は帰りに立ち寄るのもいいのでは。

 オシャレなカフェだけが神戸ではない。神戸には、まだまだ戦前からの大衆喫茶や昭和レトロな純喫茶もたくさん残っている。

(文=サブカル郷土史家 佐々木孝昌)

※ラジオ関西Podcast『神戸放談』#13「絶滅寸前?大衆喫茶」より


◆『神戸放談』
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