スマートフォンの普及により、最近では姿を見ることが少なくなった「公衆電話ボックス」。日本では使われなくなったボックスは撤去されているようですが、ドイツでは画期的な再利用方法で人々の役に立っているといいます。一体何に使われているのでしょうか。

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ドイツの電話ボックスは“読まなくなった本の回収ボックス”としてリユースされています。ボックス内にぎっしり並んだ本は、その場で手に取ったり持って帰ってもOK。SNS上でたびたび話題になり、日本でも注目されています。非常にエコな取り組みであるものの、なぜ再利用するものが電話ボックスなのか気になった筆者はドイツ南西部の都市フライブルクと姉妹都市関係にある愛媛県松山市の市役所に取材を実施。
同市市役所の観光・国際交流課担当によると「現地在住の日本人協力員の話では、フライブルクにおける電話ボックスでの本回収の取り組みは2014年頃から始まったそうです。現在では市内のほとんどの地区で見かけるという報告が入っています。維持・管理は地区住人が担当することが多いようで、張り紙にルールが書かれていたりします。この取り組みをいち早く取り入れていたのは、ベルリンやボンだと聞いています」とのこと。

さて、電話ボックスを使うようになった理由ですがドイツの天候事情が関係しているそう。というのも、ドイツは非常に雨の多い国。そのため、電話ボックスの「雨風に強く、多くが公共の場に設置されている」という強みが決め手となり白羽の矢が立ったとか。
読まなくなった本を置いていき、かわりに別の本を持って帰る“古本交換システム”がドイツ全土で浸透している訳ですが、これは「何事も再利用を試みる国民性」が背景にあります。同国では、いらなくなったおもちゃ・衣類・雑誌などを簡単に捨てることはせず、「ご自由にお持ち帰りください」という旨のメッセージとともに路上に置いておく習慣が当たり前に根付いています。
中でもフライブルクはCO2削減のため市内中心部への自動車乗り入れを制限しトラム(路面電車)や自転車を利用する政策を推進したり、ソーラーパネルや風車によるエネルギーを利用した住宅地の開発も進んでおり、「環境政策の進んだ街」として世界的に名を馳せています。1992年にはドイツ国内において「環境首都」に選ばれました。
「フライブルクには『まだ食べられるけれど処理に困っている食材』などを入れるスポットも数箇所あります。ドイツの中でもフライブルク市民は『もったいない精神』と『共有精神』を強く持っています」(担当者)
1989年、フライブルクは松山市へ公衆電話ボックスを寄贈。長年にわたって公衆電話として活躍していましたが、老朽化にともないリノベーションが施され本のリサイクルブースとして再活用されているそうです。
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物をどこまでも大切にし繰り返し利用する……このドイツの精神はぜひ見習いたいものです。
(取材・文=つちだ四郎)

【取材協力】観光・国際交流課
住所 790-8571
愛媛県松山市二番町四丁目7-2 本館8階
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