雄大な自然が広がり四季によって様々な顔を見せるまち、兵庫県豊岡市。国の特別天然記念物でもある「コウノトリ」の野生復帰に力を入れていることでも知られています。
「コウノトリと共に生きるまちづくり」をテーマに野生復帰への普及・啓発活動や生物多様性の保全に取り組む、豊岡市コウノトリ共生課課長の宮垣均さんに詳しい話を聞きました。
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コウノトリは明治に入ってからその数を減らしていきました。かつて日本中に生息していた彼らですが、第二次世界大戦後に行われた研究者らの調査によって「兵庫県の豊岡にしか生息していない」という驚きの事実が判明したのです。
その後、山階鳥類研究所の山階芳麿博士がコウノトリの保護を兵庫県に強く要望。1955年に市内で保護活動が本格的にスタートされるも数の減少に歯止めがきかなかったため、1965年から人工飼育を開始することに。野外で生息している個体を“緊急避難”を兼ね捕獲し繁殖を試みたのです。
しかし卵からヒナが生まれることは叶わず、1971年に市内で生息していた最後の一羽が死亡。コウノトリは、野生下での「絶滅」を経験しました。
転機が訪れたのは1985年。ロシアからコウノトリを数羽受け入れたことでその中からペアが生まれ、人工飼育に取り組み始めて25年目となる1989年に初のヒナが誕生。その後は順調に数が増加し、現在では「兵庫県立コウノトリの郷公園」(豊岡市祥雲寺)にて90以上の個体が飼育されています。
同市と深い関わりを持つコウノトリについて、宮垣さんに豆知識を教えてもらいました。
「コウノトリは成長するにしたがい鳴かなくなります。鳴管の形状が単純なため、大きな声を発することが難しいのです。かわりに彼らは、声ではなくクチバシを叩いて音を出す『クラッタリング』を使ってコミュニケーションを取っています」(宮垣さん)
全国的にも個体数を伸ばしているコウノトリ。宮垣さんはそんな彼らをシンボルとして、農作物や生物を育んでいきたいと意気込みます。「コウノトリはそれぞれに足環を付けているので、見分けて性格を探ってみるのもおもしろいと思います。多くの人に興味を持ってもらえれば」とメッセージを発信していました。
(取材・文=長塚花佳)
※ラジオ関西『Clip』水曜日 2025年7月16日放送回より



