兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では、開催中の大阪・関西万博に合わせ、博覧会が盛んに行われた明治期に兵庫県内で作られた輸出陶磁にスポットを当てた特別展「博覧会の時代 HYOGO発、明治の輸出陶磁」が開かれている。専門家が分かりやすく解説する「リモート・ミュージアム・トーク」の今回の担当は、同館学芸員の村上ふみさん。最終回となる第3回は「政府が作った図案集『温知図録』と兵庫県内産地」。
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兵庫陶芸美術館では、2025年8月24日(日)まで、特別展「博覧会の時代 HYOGO発、明治の輸出陶磁」を開催しています。明治期は、万国博覧会や国内で開催された博覧会への出品や輸出が大いに奨励され、重要輸出品のひとつとして陶磁器製造が殖産興業とも深く結びついた時代です。兵庫県内でもこの潮流に乗り、海外を指向した陶磁器が焼かれました。本展では、兵庫から世界を目指した、豪華で美しいやきものを紹介します。

明治9(1876)年のフィラデルフィア万国博覧会から明治14(1881)年の第2回内国勧業博覧会にかけて明治政府が編纂した、輸出工芸品の図案集『温知図録』には、兵庫県内産地の製品図案も掲載され、第1輯(しゅう)には、淡路の賀集三平、第4輯には出石の盈進社(えいしんしゃ)や、姫路の永世舎の名が確認できます。
出石の《白磁梅鶯貼付籠形蓋付壺》や、姫路・永世舎の《色絵金彩烏瓜図花瓶》などはいずれも、『温知図録』に掲載される製品図案と近似する貴重な作例です。展覧会では、博覧会に向けて考案された図案(パネル掲示)と対照する作品などによって、図案研究が盛んに行われた明治という時代を振り返ります。


永喜山《白磁梅鶯貼付籠形蓋付壺》です。『温知図録』に近似する図案の細工を施した蓋付壺で、図案には盈進社の製品として掲載されていますが、本作は同時代にあった別の製作所の銘が入っています。永世舎《色絵金彩烏瓜図花瓶》は、『温知図録』の図案と絵付けが一致する花瓶。『温知図録』では一対とされ、本来は2点1組で製作されたと考えられます。






