「寝耳に水」←本当の意味知ってる? 実は異なる解釈をされた“ことわざ”が複数存在 専門家に聞いた | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「寝耳に水」←本当の意味知ってる? 実は異なる解釈をされた“ことわざ”が複数存在 専門家に聞いた

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「ひょうたんからコマ」「馬の耳に念仏」など、古くから日本で使用されてきた“ことわざ”。本格的に研究が進められたのは1980年代後半からだそうで、わりと近年の話なのだとか。まだまだ分かっていないことが多くあることわざについて、「ことわざ学会」の代表理事・北村孝一さんに詳しく聞いてみました。

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●日本における、ことわざの使用はいつから?

【北村さんの回答】ことわざは民衆の中の会話から生まれてくるもの。昔から日本で使われていたことは分かっているのですが、いつからどのように使われているのか分からないですね。その中で、時代や使用状況が特定できた古いもののひとつが「我が身をつねって人の痛さを知れ」。これは鎌倉幕府の時代に北条重時が書いた『極楽寺殿御消息』の中で「女などのたとえに、身をつみて人のいたさをしると申す。本説ある事也」と書き遺したので、当時からほぼ同じ内容ものが使われていたことがわかります。こうした事例はかなり稀です。

●外国でもことわざは使われていた!?

【北村さんの回答】メソポタミアの古い粘土板文書には、現在のイラクあたりで4000年ほど前に使用されていたことが記されています。西洋や中国などでも古くから使われ、現在でも世界中でことわざは使われています。

●「本来の意味とは違う伝わり方」をしていることわざが存在するって本当?

【北村さんの回答】あります。例えば「寝耳に水」がそうです。「予想だにしていない知らせ・出来事に突如遭遇し驚くこと」を指すと解釈されていますが、本来は「ぐっすり眠っているうちに大雨が降り、気がついたら大水(洪水)の轟音(や危険を知らせる声や鐘の音)が迫っていた」という意味です。

 みなさんご存知の「縁の下の力持ち」もそう。現在は「目立たないけれど重要な役割を果たしている人」をさしますが、本来は「人から評価されない立場で、やりがいがないこと(やめたほうがよいこと)」を意味していました。この場合の「力持ち」とは単に力の強い人ではなく、古くから神社などで競われたり見世物にもなっていた「力持ち芸」のことです。今日でいえば、重量挙げのようなもので、重い岩石や(片手で)米俵・碁盤などを軽々と持ち上げて見せていました。見物人がいなければ張り合いがないのは舞いも一緒で、「縁の下の舞い」という表現もありました。

●違う意味になってしまったのはなぜ?

【北村さんの回答】ことわざは、文字によるのではなく「口伝え」が基本。お互いにわかっていることは省略し、短いフレーズにします。しかし、長い年月が経過し生活や文化が変わると、説明ぬきにわかっていたことが通じなくなり、ことわざ全体の意味も誤解されることが出てきます。しかし、本来の意味をしっかり確かめ、先人の知恵に学ぶことも大切ではないでしょうか。

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 素晴らしい文化であるにもかかわらず文字ではなく庶民の口伝えであることから軽視され、長い間研究対象とされなかったことわざ。そのため、ここ数年で本来の意味が判明したものも多いそうですよ。

(取材・文=堀田将生)

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