古民家や空き家の活用が全国的な課題になっています。地域住民のつながりが希薄になるに伴い、所有者が分からず放置され、修繕も取り壊しもできない建物が増える……そうした負のスパイラルは今や社会問題に。そうした中、兵庫県たつの市にて廃銭湯がリノベーションされ、地域の交流の場となっているという情報を聞きつけた筆者。さっそく取材しました。
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銭湯の廃業はなんと43年前。そこから長らくシャッターが閉まっていたそうですが、リノベーションが施され「温(おん)」という飲食店に生まれ変わりました。脱衣所は食事スペース、ロッカーは本棚として使用されています。


店内のさらに奥には「立ち湯」と呼ばれる珍しい浴槽もそのまま残されており、映えスポットとしてカメラを構える来店客も。昨今のレトロブームもあり、こうした“建物の記憶”を受け継ぐ空間に心を動かされる人は多いのかもしれません。


同店オーナーの佐久間祐一さんは「近隣・遠方問わず老若男女幅広い世代が集っています。事実、たつの市でも人と人との関係が希薄になっていますが、ご近所さん達の近況報告やママさんたちの情報交換の場として利用されていることが嬉しい」と話します。今後は活用の幅を広げ、銭湯ならではの音の反響をいかした音楽イベントも思案中だそうです。

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一度はその火を消したものの人の手により再び息づき、地域にぬくもりを灯す存在となった「古き良き建物」は各地に存在すると聞きます。そうした空間に訪れてみると、何らかの学びが得られるかも知れません。


(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「谷五郎の笑って暮らそう」2025年10月26日放送分より



