灘五郷の銘酒・大関、丹波杜氏の技術継承 “見える醸造” ~マイクロブリュワリー『魁蔵』完成!

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 創業314年、酒造大手・大関株式会社(本社・兵庫県西宮市)が10月29日、「見える醸造」をテーマとしたマイクロブリュワリー『魁蔵(さきがけくら)』を゙新設した。

お披露目された大関のマイクロブリュワリー『魁蔵(さきがけくら)』<2025年10月29日撮影>

 大関が蔵を新たに建造したのは65年ぶり。次世代への醸造技術の継承を目指す。同時に後継者育成と日本酒文化の発信を目指す。木造平屋建、130平方メートル(約40坪)のコンパクトな蔵で、洗米から麹造り、仕込み、上槽、瓶詰めまで一貫して行う。

魁蔵の内部 米などの穀物を蒸すための甑(こしき)は外が硬く、中が柔らかい米に仕上げる ※一般開放はしていません

 敷地内の更地を活用、建物設計から施工、機器の配置まで社員自らが参画し、ゼロから積み上げた。仕込み場はガラス張り。訪れた人は酒造りの工程を間近で見ることができる。

麹室(こうじむろ)麹菌が発育しやすいように、一定の温度を保ち、蒸した米に麹菌を繁殖させるための特別な部屋

 灘五郷の東、今津郷(西宮市)の銘酒として、日本を代表する酒造メーカーとして発展した大関。大量生産体制の中でオートメーション化とコンピューター管理のもと、一定の品質を保つ確実な製造方法を確立する一方、従業員が酒造り全体を経験できる機会が減少しており、伝統技術の継承が課題となっている。

「時代の変遷とともに、企業として酒蔵としてどう生きていくか岐路に」大関・長部訓子社長

 また若年層を中心として日本酒離れ、酒造業界では人材不足、杜氏の高齢化といった構造的な問題に直面している。

 こうしたことから、創業当初の手仕込や息使いを通し、人・米・水が一体となって、“伝統的酒造り(2024年12月・ユネスコ世界文化遺産登録)”と向き合い、丹波杜氏の技術と心を、次世代に継承するのが狙い。

完成セレモニーでは木桶に麴と水を入れて撹拌する際に歌われた丹波杜氏の酒造り唄のひとつ「酛擦り唄(もとすりうた)」も披露された 祝い事でも歌われる
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