最近、街で見かけなくなった「駄菓子屋」。かつては子ども達が集まり、地域交流の場所にもなっていました。現在、店舗数は減少し大人と子どもが接する機会も減っています。そんな中、神戸市にある駄菓子屋でおもしろい取り組みが行われているという情報を聞きつけた筆者。さっそく取材しました。
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そのおもしろい取り組みとは、“駄菓子屋の子ども食堂”。「2025年2月から、朝食を提供する子ども食堂を始めました。現在は毎週1回、月曜日か木曜日の午前7時~9時に実施。中学生までは1人50円、高校生以上は1人300円でおかわり自由。予約なしで行っています」と話すのは、Piggy's Parlor(神戸市中央区)店主の田中優衣さんと史男さんです。

そもそも、ふたりが駄菓子屋を始めたのは2018年のこと。ある社会問題がきっかけだったそう。「当時、子どもへのネグレクト(育児放棄)による事件がメディアで頻繁に報道され、近隣にも同様の環境に置かれている子どもが居ることを見聞きしていました。そうした状況がたまらなくなり、夫婦で話し合って『子どもの居場所』を作りたいと強く思いました」と、当時を振り返ります。
さて、同店の子ども食堂が一般的なものと違うのは「朝食」に特化しているところ。その理由について史男さんは次のように明かします。
「子ども食堂支援機関の方や運営者の方から、『朝食を食べない児童が多く、それが不登校や遅刻の大きな要因になっている』ということを聞きました。だったら、朝ごはんを専門にしてみようと。それで子ども達が元気よく学校に通えるようになれば……と考え活動を開始しました」(史男さん)

活動を通じて、子どもたちに変化もあったと話すのは優衣さん。
「子ども食堂を始めた当初、私服でお店に来る不登校の子はある時から制服で来るようになりました。いつも遅刻していた子は、友達と一緒に学校に行くように。学校側からも『子ども食堂の開催日は元気よく集団で登校してきます』とお聞きしています。今まで勉強に興味を持たなかった子が、高校進学を口にするようになったこともあります」(優衣さん)

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ちなみに、食事中に行儀が悪かったりふざけたりする子には真剣に叱ることもあるそうです。朝食で子どもたちの人生に関わる……田中夫妻の愛情は、駄菓子屋の枠を超え多岐にわたります。

(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2025年11月5日放送回より




