奉納物は「マンボウ」? 平安時代に建立された西宮神社に残る“御社用日記”に記録あり【兵庫・西宮】

LINEで送る

この記事の写真を見る(4枚)

 全国で「えびすさま」をまつる神社は約3500。その総本社を担うのが西宮神社です。ここには歴代神主が代々書き綴ってきた記録「西宮神社御社用日記」が保管されており、2016年に西宮市、2017年には兵庫県の重要有形文化財に指定されています。日記には奉納物にまつわる珍しいエピソードも残されているのだとか。詳しい話を担当者に聞きました。

☆☆☆☆

 平安時代末期以前に創建されたことが分かっている西宮神社は海を司る神さま。大漁満足・海上安全の御神徳が有名でしたが、時代を経て「商売繁盛」「福」をもたらすとして信仰を集めています。

西宮神社・拝殿(画像提供:西宮神社)

 1月9~11日まで行われる「十日えびす」は全国から100万を超える参拝者を集め、1月10日午前6時に実施される「開門神事福男選び」は全国的にも有名な神事となっています。また昨年には、本拝殿の屋根銅板2万3000枚が葺き替えられたそうです。

毎年恒例となっている開門神事福男選び(画像提供:西宮神社)

 さて、冒頭で述べた「西宮神社御社用日記」。いったいどんな書物なのでしょうか? 

 担当者によると最も古いものは1694年に書かれており、江戸時代だけでも212冊の記録があるといいます。中でも興味深かったのが、1811年に小西伊兵衛という者が銛(もり)でしとめ奉納した“マンボウ”についての記述。参詣者に10日ほど見世物として展示されたのだとか。

左/西宮神社御社用日記 右/マンボウの奉納についての記載(画像提供:西宮神社)

 奉納物は一般的に酒や米が多いそうですが、漁業関係者が参拝する際には自らが獲った魚や各地の特産品の場合もあるとのこと。「十日えびすの3日間は神戸東部水産物卸売協同組合より、例年3メートル300キログラムほどの大マグロが供えられ、魚体に硬貨を貼り付ける習慣があります」と担当者は話しました。

まぐろに賽銭を貼り付ける人々(イメージ)

 今後は若者にも働きかけ、神社と門前町・氏子地域と共に更に当神社を発展させていきたいとのこと。担当者は最後に「西宮神社の新春は、初詣に十日えびすとおまつりが続きます。えびすさまの福を受けて、福々しい一年を過ごして頂ければ」とコメントし、インタビューを締めくくりました。

(取材・文=長塚花佳)

※ラジオ関西『Clip』水曜日 2025年12月31日放送回より

LINEで送る

関連記事