あれもこれも静電気のおかげだった! 大阪市立科学館で企画展 間近で実験 パチッとしない方法も紹介

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 静電気が私たちの生活にいかに役立っているかを紹介する企画展「静電気の世界」が大阪市立科学館(大阪市北区)で開かれている。探求の歴史、最先端技術、意外な活用方法まで、身近な静電気について多角的にひもとく。2026年2月8日(日)まで。

大阪市立科学館(大阪市北区)

 静電気というとパチッとした痛みを伴う「迷惑な現象」をイメージするが、古来、人間はさまざまな形で静電気の恩恵を受けてきた。上羽貴大学芸員は「静電気があってこそ私たちの生活がある」と指摘する。

 展示は3つの章で構成。「静電気の科学」では、摩擦や力によって電荷が移動し、プラスとマイナスのバランスが崩れることで生じる静電気の性質を解説する。水を落とすだけで電気がたまる「ケルビン水滴発電機」やイギリスの発明家ウィムズハーストが発明した誘導起電機など、19~20世紀のさまざまな発電装置の仕組みを、同館スタッフによる実演で学ぶことができる。「ヴァンデグラフ起電機」は内部で生じた電荷を金属球に蓄え、10万ボルトを超える高電圧を作り、小さな雷のような火花放電を起こす。猪口睦子学芸員は「普通の水道水を落とすだけ、円盤を回すだけで実際に発電する様子をぜひ間近で見てほしい」と呼びかける。

「ケルビン水滴発電機」について説明する猪口睦子学芸員
学芸員らスタッフがさまざまな実験を披露する(開催時間は不定)
静電気でまんべんなく塗装する「静電粉体塗装」を実演する上羽貴大学芸員
「イオナイザ」コーナー。バータイプのイオナイザがイオンを発生し、空間を除電する

 冬場に多発する、私たちの日常生活で起こる静電気への対処法も見逃せない。たとえばドアノブに触れる場合、指で持った鍵などをあらかじめノブに接触させて静電気を逃すと、手で触れた時、パチッとしないという。

「静電気の探究」では、静電気研究の歴史をたどる。古代ギリシャでコハクが物を引き寄せる現象が知られ、それが電子(エレクトロン)の語源となったことや、17世紀以降ヨーロッパで研究が進んだ経緯を紹介する。江戸時代の日本にも西洋書を通じて知識が伝わり、大阪の蘭学者・橋本宗吉が静電気の研究をまとめた著書「エレキテル究理原」の複製や、静電気発生装置「エレキテル」の複製品も並ぶ。エレキテルでは、ガラスと皮を摩擦して発電する構造が内部まで観察でき、当時の科学的探究の様子をうかがわせる。

会場の様子

 驚くべきは「静電気の利用」だ。私たちが日常使っているコピー機のトナー転写、人形などの表面にフワフワの毛を付ける「静電植毛」技術、精密機器の大敵である静電気で駆動する腕時計「アキュトロン」など具体例を多数取り上げ、静電気が日常生活や産業技術でいかに幅広く利用されているかを紹介。さらに、イオンを発生させて除電する装置「イオナイザ」を置いたコーナーや、食品サンプル中の微生物の有無を素早く調べる「誘電泳動」、カミナリの音が刺激となり、キノコの生育が促されるなど農業分野での研究についても挙げられている。

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