ドイツの「アンペルマン」を知っていますか? グッズなども展開されるほど人気があるキャラクターだそうですが、その存在が確立するまでには紆余曲折があったとか。詳しい話を『ドイツニュースダイジェスト』の土井さんに聞きました。
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「アンペルマンとは帽子を被った男性キャラクター。自動車の大衆化によって交通事故が増えていた1961年、旧東ドイツの交通心理学者であったカール・ぺグラウが歩行者のために考案した信号機の『進め・止まれ』を表すマスコットです」(土井さん)
アンペル(Ampel)とはドイツ語で信号機を意味し、ドイツでは日常的によく使われている言葉です。つまりアンペルマンは直訳すると「信号機男」ですが、土井さんによれば「信号機くん」というような親しみがこもったニュアンスが含まれているそうです。

ですが「ベルリンの壁崩壊」という歴史的事件の影響を大きく受けることに。
「壁崩壊後、ほとんどの東ドイツ製品が消滅しました。その中にアンペルマンも含まれていたのです。西ドイツ地域で使われる信号機に次々と置き換えられていくなか、危機を救ったのは西ドイツ出身のデザイナーであるマルコス・ヘックハウゼンでした」(土井さん)

ヘックハウゼンは撤去されたアンペルマンを再利用し、壁掛けライトを製作。それが瞬く間に話題となり、現在も販売されているとか。のちに彼はアンペルマンの生みの親であるぺグラウと知り合い、共に「アンペルマン復活運動」を始めました。
この運動が実を結び1997年に信号機の復活が実現、今ではベルリン市内の信号機の9割がアンペルマンとなっています。また、東ベルリンを含む旧東ドイツの多くの街では、自転車に乗っていたり女の子だったりとバリエーションも豊か。ドイツ全土で見ると、街の特徴に合わせた“ご当地アンペルマン”を設置しているところもあり、滋賀県で生まれた交通安全キャラクター「飛び出しぼうや」を彷彿とさせます。

ベルリン市内各地にあるアンペルマンショップでは、アンペルマンをモチーフとしたキーホルダーや文房具、アパレルなどのユニークなグッズが並ぶそう。土井さんもベルリンに行くたびに訪れているそうで、「つい集めたくなってしまうのが魅力」と語ります。
「ヘックハウゼンはアンペルマンについて『東ドイツにとって、アイデンティティ喪失に対抗するための象徴的な存在』と語っています」と土井さん。こうした先人の熱い思いが、アンペルマンをドイツ全土で愛されるキャラクターへと生まれ変わらせたのです。
(取材・文=つちだ四郎)






