しばしば目にする「冠婚葬祭」という言葉。婚は“結婚”で葬は“葬式”を表している事は分かりますが、「冠」と「祭」は何を表した漢字なのでしょうか? 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)の名誉教授・新谷尚紀さんに聞きました。

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●冠=元服(げんぷく)
新谷さんによると、冠は「人生儀礼」の出発点“元服”を指しているといいます。昔の日本では子どもから大人へ成長した印として、髪型を変え冠などを被せました。これは加冠(かかん)と言い、これを境に子どもが「一人前の大人として責任を持つ」という社会的な承認を得る極めて重要な儀式だったそう。元服は現代で言えば成人式ですが、七五三なども含めた「子どもの成長を社会が認めるプロセス」にあたるのがこの漢字なのだとか。

●祭=先祖を祀る儀式
盆・彼岸・正月に加え、法事・法要といった「先祖に感謝し祈りを捧げる年中行事」を表しているのが祭。葬が亡くなった直後の儀式ならば、祭は永続的な『家族や一族の絆を確かめ合う時間』と言えます。

●冠婚葬祭は「人生の四大イベント」を表していた
「冠婚葬祭」は単なる四文字熟語ではなく、人々が昔から大切にしてきた“節目”をひと言で言い表した言葉でもあります。それぞれの文字をこの視点で解釈すると、「冠=大人になる(成長の祝い)」「婚=家族を持つ(結婚の喜び)」「葬=別れを告げる(死を畏れ敬う儀式)」「祭=繋いでいく(先祖への感謝)」なのだとか。
さらに「人生の秩序」という視点だと、冠・婚はこの世での生を充実させ次世代へ繋ぐ「生」の儀礼、葬・祭はこの世を去り清められ子孫を守る先祖のみたまとなっていく「死」の儀礼だと考えられているそうです。
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いずれにせよ、古来から人々はこの「4つの事柄」を大切にしてきました。そうすることで共同体の絆を確認し、ひいては個人の不安を解消してきたのかもしれません。
(取材・文=堀田将生)



