太平洋戦争末期に旧日本海軍の切り札として開発された戦闘機「紫電改」の実物大模型の一般公開が6月7日、加西市鶉野町の鶉野飛行場跡にある備蓄倉庫南広場であった。新型コロナウイルスの感染拡大で公開を取りやめてから3か月ぶりの再開。家族連れなど約800人が見学に訪れ、平和のありがたさを今に伝える機体を写真に収めていた。
紫電改はスピード、上昇力とも優れ、主力戦闘機「ゼロ戦」の後継機の期待を担った。川西航空機(現・新明和工業)で約400機が製造され、そのうち46機が旧姫路海軍航空隊訓練基地の鶉野飛行場に隣接した川西航空機鶉野組立工場で造られた。鶉野飛行場で試験飛行も行われた。
実物大模型は全長9.37メートル、翼幅11.99メートル。巨大防空壕や爆弾庫、敵機を迎え撃つ対空機銃座など鶉野飛行場跡周辺の戦争遺跡を整備して平和学習などに活用を目指す加西市が、こうした遺跡群のシンボルとして約1500万円かけて製作、2019年6月から一般公開してきた。
この日は2人がかりでハンドルを回してエンジンをかける実演から始まった。続いて模型の製作に当たって紫電改に関する多くの資料を提供した戦史研究家、鶉野平和祈念の碑苑保存会理事の上谷昭夫さん(81)=高砂市=が機体をバックに、日本海軍の戦闘機開発の歩みを説明。「エンジンはゼロ戦の1000馬力に対し、紫電改は倍の2000馬力」「1945年3月に松山市上空で米軍機57機を撃墜し、紫電改の評価が一気に高まった」「鶉野飛行場には終戦時、紫電と紫電改合わせて70機が残存した」などと語った。
この後、見学者たちは紫電改の実物大模型を取り巻き、様々な角度から撮影していた。午後になっても来場者は途切れず、スタッフの説明に耳を傾けていた。
一般公開は毎月第1、第3日曜の午前10時~午後3時。申し込みは不要。公開日以外は当時の格納庫を模した防災用の備蓄倉庫に保管され、外から見ることができる。問い合わせは加西市鶉野未来課、電話0790・42・8757まで。