ゲリラ豪雨による増水で子どもを含む5人が死亡した神戸市灘区の都賀川で起きた水難事故は28日、発生から12年を迎えた。
2008年7月28日、朝から快晴だった神戸市の上空。しかし灘区は午後3時前に突然、激しい雷雨に襲われた。水位は10分で約1.3メートルも上昇、津波のような濁流が襲い、子ども3人を含む5人が死亡した。
事故で犠牲になった子どもと同じ学童保育所に子どもを預けていた神戸市の谷口美保子さんは、市民団体「7月28日を『子どもの命を守る日に』実行委員会」を事故の翌年に立ち上げ「二度と事故を起こさないために、活動で得た知識や教訓を多くの人と共有したい」と訴える。
■「もうダメだ」濁流の恐怖語る~能勢文夫さん
大阪府吹田市の建設会社経営、能勢文夫さんは当時、都賀川の河口から約1.5キロ地点の山手幹線に架かる「新都賀川橋」の耐震補強工事中だった。突然の雨で撤収作業を始め、最後に残った能勢さんの眼前に上流から濁流が迫った。「このままでは死んでしまう。もうダメだ」。とっさに橋脚にしがみつき約30分後、レスキュー隊に救出された。救急車内で「子どもが流された」と聞き鳥肌が立ったという。
■「水の恐ろしさ、油断しないで」
大雨や台風の季節に入り、能勢さんは社会全般の水害に対する認識はまだまだ甘いと指摘する。「事故前の自分と同じで『自分だけは大丈夫』と過信している。毎年、全国で風水害が起きる。被害が多いのは一級河川。でも川幅が広い分、増水しても時間的に逃げる猶予はある。ただ都賀川のように流域面積が小さいと(大雨が)降った瞬間に増水する。今は1回で驚異的な量の雨が降るだけに水の恐ろしさを知ってほしい」と訴える。