このところ押し寄せる感染者の拡大で、営業を続ける店、きちんと(営業時間の短縮要請などの指示に)従う店、この二つに不公平感が生まれるのは自然のこと。どんどん国民はバラバラになっていく。そうなればますます国の政策の効果がでない。
地域住民のいらだちを受け、また地域住民を守るために都道府県が独自の判断をする、47都道府県それぞれ事情が違うから方針はバラバラ、お隣り同士の自治体なのに足並みが揃わない。県境を超えた途端に同じ行動でも「お作法」が違ってしまい混乱を招く。関西ならば、兵庫・大阪・京都の一体化について「ただ何となく足並みは揃えるが…机の下で足の蹴り合い、知事どうしが個人的に牽制し合うだけ」というイメージが付きまとう。
小池・東京都知事の「特別な夏、帰省しないで」という訴えと、6日に広島で1か月半ぶりに会見し「高い緊張感のもと状況を注視する」と述べるも、帰省の自粛までは求めなかった安倍首相、この食い違い。新型コロナ感染への不安で人々の心は揺れ動くなか、政府の方針は予測不能の迷走台風のように進路が変わる、風に翻弄される羽根のようにどこへ飛んでいくかわからない。これでは国民は戸惑うばかりである。
■知事たちの乱も政府は静観
お盆が近づくにつれて今度は地方自治体のトップたちまでが、この戸惑いの渦に巻き込まれつつある。井戸・兵庫県知事は「帰省を帰省をやめろというのは酷だ(否定するものではない)が、接待を伴う飲食店などを利用する目的での県境をまたぐ移動の自粛を」と決して歯切れ良いとはいえない。吉村・大阪府知事の「コロナにうがい薬」発言は前のめり感が否めない。ついに愛知、沖縄は独自の緊急事態宣言を出した。しかし政府は静観の構えだ。
~勝海舟には晩年、自身の来歴や人物評などを赤坂・氷川の自宅で縦横無尽に語った時事談話集がある。『氷川清話(ひかわせいわ)』。痛烈な時局批判もある。歯に衣着せぬ表現が小気味良い~
海舟はこの 「氷川清話」 で「人はよく方針、方針というが、方針を定めてどうするのだ。およそ天下の事は、あらかじめ測り知ることのできないものだ。網を張って鳥を待っていても、鳥がその上を飛んだらどうするか」と述べた。明治26年(1893年)の談話である。一旦方針を定めたものの、それが世情に合わなければよりよい方向へ改める、それならば意味があるし、国民も理解できる。