兵庫県警は10月から、全国の警察で初めて、110番通報者のスマートフォンのビデオ通話機能を使って、事件や事故の現場の映像を受信するシステム「Live(ライブ)110」の運用を始めた。
事件や事故、災害に遭遇して通報した人に、兵庫県警・本部の通信指令室の担当者が映像の送信を依頼。同意が得られれば、URLが記載されたショートメッセージ(SNS)を通報者のスマホ宛てに送信する。 URLをクリックして専用サイトにアクセスすると、スマホのビデオ通話機能が起動し、電話がつながったまま、 撮影した映像を通信指令室内のスクリーンに映し出し、リアルタイムで現場の様子を把握できるという。 事前にアプリのダウンロードが不要なのも手軽だ。
兵庫県警は2019年8月以降、高速道路での横転事故や強風によるフェンス倒壊など24件で実証実験。撮影動画と同時に、検索大手・google(グーグル)の「ストリートビュー」 サービスが表示され、街中などの様子をパノラマ写真で見ることができ、被害を受ける前と後の状態を比較できるようにした。
店舗などでの強盗事件が発生した際に防犯カメラのモニター画面を撮影してもらうことも想定。これまでは警察官が現場に到着してからカメラを確認していたため、状況の把握にかなりの時間を費やし、逃走犯の割り出しに手間取っていたが、迅速に対応できるようになる。 また、山岳遭難の際には同じくgoogle(グーグル)の地図サービス「グーグルマップ」を使って、捜索者が遭難者にたどり着くための道筋を表示できる。
開発に携わった通信システム会社「ドーン」(本社・神戸市中央区)の担当者は「緊急時の通報は、通報者も動揺していることが多く『どこで・だれが・どうなっているか 』という情報を電話で伝えるのが難しい。 こうした課題は従前から指摘されており、 映像であれば視覚的な情報により迅速に伝えることができるメリットがある」とコメント。 また兵庫県警・通信指令課は 、警察官が現場に到着する前に事件や事故の様子を詳しく把握することができるため、 都市部の住宅街や繁華街のみならず、農村や山間部などでも活用の幅が広がると期待する。