ここにもスピード感?『脱・ハンコ』~是か非か(3)神戸で100年、老舗店主の思い「そらぁ、わかりますやろ?」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

ここにもスピード感?『脱・ハンコ』~是か非か(3)神戸で100年、老舗店主の思い「そらぁ、わかりますやろ?」

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 神戸・湊川神社の東、神戸地裁と神戸地検が立ち並ぶ、その真向かいにある老舗の印章店「新居文刻堂」。創業105年、祖父の代から受け継ぐ3代目店主・新居芳朗さん(70)に『脱ハンコ』の動きとどう向き合うのか聞いた。

新居文刻堂
創業105年 新居文刻堂(神戸市中央区北長狭通)

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 今、「オンライン化」が叫ばれて、効率重視になっていますが、それも時代の流れだと思うんですよ。私は覚悟していた。パソコンが普及した時にね。これが15年から20年前の1990年代後半から2000年代にかけてやね。でも、その少し前、神戸で商売する私たちにとって阪神・淡路大震災(1995年)が起きて、荒廃した街から立ち上がる、店を再開させる時に 「オンライン化」 を意識させられる瞬間があったんですよ。というのはね、行政機関は何件も何件も書類を見なきゃならない。あくまでも紙ベースで手続きが進むのですが「印鑑の捺印は省略します。署名だけお願いします」との言葉。当時はビックリしましたよ。もちろん今で言う「オンライン化」という言葉を使うことはなかったけど、当時はそれだけ大量の書類をさばかなければならなかったんでしょうな。確かに大震災から数年、神戸は非常事態が続きましたから。

 そもそも日本では1873(明治6)年、明治政府の太政官(だじょうかん)布告で署名・実印の捺印のない公文書は裁判で認められないと明記されました。それ以来、決まりといいますか、 習慣といいますか、法的に重要性が確立して日本社会に定着してゆくんですね。

古くから公印の受注も多く
古くから公印の受注も多く

 ウチの店「新居文刻堂」 は 神戸地裁、神戸地検の庁舎の向かいで商売を続けています。戦前、神戸地検の場所は神戸市役所だった。昔から、公印を作ることもありましたし、検事さんや弁護士さん、司法書士さんからも発注はありましたよ。もちろん、認印を買いに来られる一般の方も数多くいらっしゃいます。

 いまやパソコンでデザインされた文字や字体をなぞって機械で彫る、というやり方が主流なのかもしれませんが、私は違う。1つ1つお名前を手書きして、あくまでも手仕上げにこだわる。だから唯一無二のハンコが出来上がる。同じものは絶対に出来ない。どこへ行っても同じハンコは手に入らない。なおかつ見た目も高級感があるように仕上げなきゃならない。本当に大事な、他にないハンコだけが残ってゆく時代になると思いますよ。

新居芳朗さん
新居芳朗さん「あくまでも手仕上げにこだわる」

 たとえば天皇陛下がお使いになるのは象牙のハンコ。日本国憲法で御璽(ぎょじ)は、天皇陛下の国事行為に伴い発せられる文書に押印されますね。 陛下が崩御されると、そのハンコは京都の下鴨神社に納める。 御本殿本殿の左手に印璽社(いんじしゃ)が古くから祀られている。古くから「印」というものは宮廷や社寺において貴重な秘印として扱われ、それが次第に神格化されました。

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