10月24日付で神戸地裁・所長に着任した古財英明(こざい・えいめい)氏が、17日に開かれた会見で 「民事裁判手続きのIT化が進んでいる。さらに利便性を高め、迅速化に努めたい」などと抱負を述べた。
古財氏は熊本県出身の63歳。京都大を卒業後、1986年の大阪地裁を皮切りに最高裁、東京、福岡などの裁判所に勤務、民事裁判を担当。農林水産省や内閣司法制度改革審議会事務局にも出向した。
スタートから12年目となった裁判員裁判については「わかりやすく、見て聞いて裁判がわかるという、公判中心主義になったが、裁判員の辞退率の上昇も懸念される。また長期の審理となった場合、裁判員の負担が非常に大きく、適正な裁判を行うにはまだまだ証拠開示などが不十分な点が課題だ」と述べた(※2018年4~11月、神戸地裁姫路支部で実質審理期間が過去最長の207日となった殺人・逮捕監禁致死事件の裁判員裁判が開かれている)。
また、神戸市で2019年、特定抗争指定暴力団・神戸山口組の直系組長が襲撃され、対立する六代目山口組系の組員らが起訴された殺人未遂事件をめぐり、裁判員裁判の対象とすべきとした神戸地裁の決定を覆し、大阪高裁が11月、対象から除外としたことについて、「裁判員の身の安全を確保するため、危険性が高い事件の審理の参加を除外するという立法趣旨だが、 裁判員裁判の対象事件であれば、本来はできる限り裁判員に参加してもらいたい。運用面でどこに線を引くか難しい」と指摘した。
神戸地裁は新型コロナウイルス対策について、10月28日から法廷での傍聴者数を全体の3分の1から2分の1にしたが、古財氏は感染拡大の第3波の最中、予断を許さぬ状況に「広い法廷、広い評議室のもと、12月1日からは選任手続きで訪れた裁判員候補者にも検温を行うなど、一層の注意を払いたい」とした。