愛知県を拠点に活動する現代作家・徳重道朗が、神戸という都市を「水」という観点からとらえ制作した作品が、兵庫県立美術館のアトリエで展示されている。
徳重道朗は、会場をなんらかの風景に見立て、その場所の特性を巧みに生かしたり、場所の意味を引き出すインスタレーションで知られる。今回は、兵庫県立美術館が、今注目すべき作家を紹介するシリーズの第11回。美術館側は、流し場のあるアトリエで水に関係するインスタレーションの新作を依頼した。
アトリエの天井の高さは7メートルほど。その高さを生かした作品は、流しの蛇口をひねると、水が、天井近くからじょうろやじょうご、炊き出し用の大鍋や、県立美術館の椅子、古いバケツ、新しいバケツなどを通って流れていく。「地元(神戸)」で出会った人たちから集めたものを使ったこの「付け替えられた水道」は水が流れる音も楽しめる。徳重は「音までは想定していなかった。偶然の産物」と話す。
「神戸は、海が身近なだけでなく山も近いことから、市街地の近くに滝があったり街なかを川が流れたり、ダムや浄水場も近いなど、水とのかかわりが深く、一方で1938年の阪神大水害に代表されるような負の側面の記憶もあり、他の都市よりも複雑な関係を結んでいるように見える」。そう考えていた徳重は、特に新湊川に注目した。子どもの声が響く楽しい空間であったり近代的な隧道がある一方で、石やコンクリートで固められたり分断を生み出すなど、川によって作られた様々な人間のドラマを写真や絵画などで表現している。
兵庫県立美術館 注目作家紹介プログラム チャンネル11「徳重道朗 ゆきゆきて神戸」、会期は12月20日(日)まで。
兵庫県立美術館 注目作家紹介プログラム チャンネル11
「徳重道朗 ゆきゆきて神戸」
会期 2020年11月21日(土)~12月20日(日)
会場 兵庫県立美術館 ギャラリー棟 アトリエ1
開館時間 10:00~18:00
休館日 月曜日
観覧料 無料
https://www.artm.pref.hyogo.jp/